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『鬼と、罪深き花畜』
【SM 官能小説】

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『鬼と、罪深き花畜』-8

「ご、ごめんなさいっ」
「こんな粗末なモノ、ほんとは切り落として去勢した方がいいんだが……」
 先生は恐ろしいことを口にしたんです。心底からゾッとしました。
「しょうがねえ。邪魔なモノを目立たねえようにしてやるか」
 何と言うことでしょう。先生は腰巻を乱暴に捲り上げ、僕の勃起を握りしめて、へし折るようにして太腿の谷間に挟み込ませたのです。
「しっかりと太腿で挟み込んでみろ」
「やだっ。い、痛いっ」
「勃起させなきゃいいんだよ。おまえが勝手に勃起させるから痛いんだ」
女性用のビキニの水着のような形の透明なショーツが用意されていたんです。生ゴム製です。それを苦労して穿かされました。生ゴムのショーツでピチッピチに絞めあげたんです。僕の男のモノは谷間に消えたんです。お尻の方に捻じ曲げられて、谷間に貼り付けられた肉茎は小さく縮んでいました。
「へへへ。これでおまえは去勢されたも同然の身だ。どうだ。本物の女になったような気分だろが」
「何だか、変な気分……」
 桜の花ビラを散らした腰巻姿の僕の裸が鏡に映っていたのです。股間の突起物を谷間に挟み込んで、生ゴムのショーツできつく絞めつけられているせいで、先生の言う通り、僕は女の身体になったような変な気分になっていました。
「早くそのカツラを被ってみろ」
「先生はどうしても僕を女としてしか見てくれないんですね」
 僕はそんな言い方で、拗ねたような顔をして先生に絡んでみました。
「おまえは俺の女じゃ、不満なのか」
 鏡の中を覗き込んでいる先生の目は蛇の目のように冷たくて、邪悪で、不気味でした。獲物を狙う蛇のような目です。そして僕が蛇の獲物にされる蝶のように美しくなければ、その邪悪な蛇は許してくれないのです。蝶のような女にされるんです。
「先生……先生がトイレで僕に言ってくれたことを、もう一度言って」
 僕は長い黒髪のウィッグを頭からすっぽりと被りながら、先生を困らせるようなセリフを口走っていました。
「い、いったい何のことだ」
 緩やかなウェーブのかかった長い黒髪を乳首が隠れるくらいにまで垂らした僕の顔が鏡に映っていました。こんな女の装いをしたらどんな風になるのか、僕が想像していた通りでした。写真で見た十六歳の頃のママの瑞々しい美貌そのものです。
 ふんわりと盛り上がったボリューム感たっぷりのゴージャスな長い髪。これが本当の自分の髪ならどんなに素敵だろうと思って、眺め入ってしまいました。
 先生もママそっくりの蕩けるような美貌に呆然と見入っています。
「……先生が僕を口説こうとしたセリフをもう一度言って」
「あ、ああ。あれか。あれは俺の本心だ。おまえほど美しい女はこの世にいねえ……本当だ。鏡を見てみろ。俺の目は狂ってなかったぞ、ミツル。おまえは想像していた以上の女だ。もっと凄い女になりそうだ」
「ほんとですか。あんなに綺麗な奥さんがいらっしゃるというのに」
 先生が僕のことが死ぬほど恋しいと言ってくれたことも僕は覚えていたんです。でも奥さんを見た瞬間に、あれは口から出まかせのセリフだったと思ったのです。男なんて、そんなものでしょう。獲物を手に入れるためならどんなセリフだって口にする生き物です。
「志摩子は……確かにいい女だ。素晴らしくいい女だが、おまえほど完璧に美しいって訳じゃない」
 先生はそう言い訳しながら僕の裸の肩に熱い口唇を押し付けてきたんです。鏡の中の僕は微笑みを浮かべながら左手で垂れてきた前髪を掻き上げていました。それはママがよく見せる癖なんです。


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