憤り-7
それから1週間も経つと、再び梨紗の様子が怠そうに疲れて見えるようになって来た。それはいつも気にして見ている修とアンナにはすぐに分かった。
「大丈夫?」
修は梨紗に話しかける。
「あ…、何とか…」
「やっぱ協力してくれないの?」
「え…は、はい…。でも人間急には変われないんで。」
「でも何か一つでもしてくれるようになった事とかないの?」
「今のとこ…」
「そっかー。」
「でも大丈夫です。言いたい事は少しでも言いますし、お2人にも相談しますから。」
「うん。」
梨紗は最後にはニコッと笑ったが、本当の梨紗の笑顔を知る修にとってはそれがどう言う状態なのかはすぐに分かる。
(くそ!何で梨紗がこんなに苦労しなきゃならないんだよ!あんなに艶があっていい匂いがした髪、パサパサじゃねーかよ。肌だって疲れてるし指だってあかぎれて絆創膏巻いてる。爪だってガチャガチャじゃねーかよ!梨紗をあんな状態にした旦那が許せない…。でも梨紗の幸せを奪ったのは俺だ。俺が悪いんだ。どうしたら梨紗を助けられる?今すぐに別れさせてもう一度俺の妻にするか…。でもダメだ、今の俺にはアンナがいる。アンナも大切な女だ。悲しませたくない。どうしたらいいんだ、俺…)
そう考える時が多くなって来た。もはやアンナは修にとって世界で一番幸せにしたい女だ。修の中でその存在感は非常に大きくなっている。梨紗とやり直したいからバイバイ…、そんな軽い気持ちではない。だが梨紗をこのままにはしておきたくない。いつも自問自答を繰り返しながら答えを出せずにいた。
アンナも修が梨紗の事で悩んでいる事には気付いていた。だが修は変わらず自分を愛してくれるし、アンナも本気で愛している。割と簡単にいいなと思う男とセックスができるアンナだが、修と出会ってそれが変わった。修以外とセックスする気は全くない。アンナはそれだけ修の事を愛していた。
だがついつい聞いてしまう。
「梨紗さんの事が心配?」
「ん?あ、ああ。」
「それは同じ会社の人として?それとも女として…?」
「えっ…?」
アンナにそんな質問をさせてしまう自分が嫌になってしまう。
「ごめんな、アンナ。同じ会社の人として、だよ。」
アンナの頭を撫でながらそう言った。その言葉が本当か嘘かは分かったが、アンナは修にスッと体を寄せるのであった。
(このままじゃダメになっちゃう…。梨紗も俺もアンナも…)
修はそのもどかしさをどうしていいか分からなかった。