続・花ホテル〜first night〜-4
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――――――先程まで頭上から降り注いでいた熱いシャワーの元栓を閉めながら、杏子は壁に手をついて足元を流れる湯の流れをじっと見つめていた。
髪はべっとりと顔と肌に張り付き、髪の毛の先からは一滴また一滴と湯の滴がタイルの上に滴る中で杏子の脳裏を占めていたのは、
あと1時間足らずでやってくる自分にとって”3人目“の男の姿。
(・・・・・・)
あの花ホテルの就職面談で初めて顔を合わせた時には、まさかこんなことになるとは思いもよらなかった。
ただ長い時間ホテル経営に関わる中で、客のセクハラやホテル内の事件に直面した時、佐々木の様々な顔や対応を目の当たりにし、彼と言う人間がより身近になってきたことは間違いない。
そしてホテルを手放すことになった時に、自らを支えてくれる姿に逞しさと頼り甲斐を覚え、
彼を離したくないという思いが昼間の行動に杏子を駆り立てたのだろう。
「ああ・・・・・」
おもむろに顔をあげ豊かな胸元を両手で抱き締めた時、
杏子の肢体は男の愛撫を受ける前から小刻みに震え、下腹部の茂みの奥は数年ぶりの男の訪れを想像して熱を帯びてくる。
「こんな風に、なるなんて・・・・」
恥ずかしさにぶんぶんと顔を左右に降りつつも、杏子の足はシャワー室のドアを開け、取っ手に引っ掻けてあったバスタオルを手にしていた。
頭からバスタオル特有の柔らかさに包まれながら、杏子は約束の時間までに部屋を片付けなければと頭を巡らせていた。
夫を亡くして以来ずっと1人寝が続いていた寝室に、久方ぶりに夜を共にするであろう男を迎えるために――――――