続・花ホテル〜first night〜-20
「ああ、分かった。それじゃあ、また目処がついたら・・・・」
ようやく会話が終わって受話器を下ろしたのを見計らい、
杏子の方も愛撫をやめ口を離した。
「浜口から杏子に宜しくと言っていたよ」
「そう・・・・貴方のお陰で花ホテルの残務処理も滞りなく終わりそうだから、そのことを言えば良かったのに」
「僕は大したことをしていないよ。全ては従業員にも慕われていた君の人間力の賜物さ」
初めて身体を重ねて以来、いつしか「杏子」「貴方」と呼び合うくらい夜を重ねてきた2人。
既に従業員達も2人に見送られる形で花ホテルを後にしていた。
もっとも彼等は口々に「最高のホテルでしたマダム」「ここで働けて幸せでした」「花ホテルが復活したら報せてください、飛んでいきますよ」、
或いは「お二人ともお似合いです」「お幸せに!」等の様々な言葉を紡ぎ、2人にとって短い時間の中での人と人との結びつきの強さを改めて感じさせる瞬間だった。
というわけで、あと2週間足らずで引き渡される建物に残っているのは、実質的に佐々木と杏子の2人だけだった。
だから残務の見通しが立った今、
2人は今まで考えたこともないようなことを誰憚ることなくできるのだった。
屋内外を問わず、昼間から裸になったり、水着のまま相手を翻弄したり、今までのホテルマン生活では絶対にできないようなことを。