君を愛してる-5
莉帆と喧嘩してから一ヶ月半。軽く二ヶ月。
突然着信音が鳴った。
「こちら真田、どうぞー」
「こちら西脇、どうぞー」
「えーっと何やっけ……って、あほか!お前からかけてきたんやろ!俺にふるな!!」
「今のは流れや、しゃーない」
「ったく、で?何?」
「緊急事態や隊長」
「何や理事長」
「種類違うやんけ」
「本題は?」
「あ、そうそう!莉帆ちゃん関西に帰るらしいで」
西脇の言葉に一瞬頭が真っ白になった。次の一言を発するのに五秒かかった……多分。
「は?何それ。いつ?」
「今日の20時5分発の電車」
今日?
今の時間を確認して、目を疑った。出発時刻まであと45分。ここから駅まで最低でも45分かかる。
「それを先に言えボケ!」
それだけ言うと電話を切り、部屋を飛び出した。駅に着くまでいろいろ考えた。
何でいきなり…。俺のいい加減さに愛想がつきた?そら、そうやろ。そこは納得や!でも何もなしにいきなり行くとか…放置しすぎたんか?それでも急にこれはないやろ!
駅に着くと人をかき分けて走った。
20時5分発………電子掲示板にはもうその数字はなかった。遅かった。
とぼとぼ出口の方へ歩いて行く。その後バイクのとこまで来て目が点になった。
「な、何してるん?」
「待ち伏せ」
「は?電車は?関西帰るんやろ?」
「うーそ!映画思い出した?」
映画………そう、ラストのあのシーン。彼女が転勤で遠くに行くと聞いて飛び出したけど、実は嘘で…なんてことが。
一気に気が抜け落ちて壁に寄りかかった。
「びびったー」
「だからあの映画見ろって言ったやん」
「見た」
「あ、そうなん?」
しばらく沈黙が続く。聞こえるのは道行く人の足音と車の音だけ。
沈黙をやぶったのは今度は俺の一言。
「内定ほぼ決まった」
「え?ほんま?!」
あれからいろんな会社探して面接も受け、一番本命の会社にほぼ内定が取れた。
「嫉妬しててん、めっちゃ仕事してる莉帆に。あと、うまくいくか分からん仕事について莉帆を支えられるかとか不安もあって…情けない話やで」
照れくさそうに言う俺に莉帆はただ微笑んでた。