君を愛してる-2
「どしたん?そわそわして」
「こういう店なんやったら先に言え!何やねんこのおしゃれ〜な店と俺!!面白すぎるわ!」
「言うたやんー"おしゃれな店"って。それにこういう店のが参考になるやろ?」
「え?…あ、あぁ」
莉帆と付き合い出したんは二年前。
大学のキャンパスライフにつきもののコンパで知り合った。大阪から上京してきた俺は聞き親しんだ関西弁を喋る莉帆と意気投合。莉帆はしっかり者で気の利く自慢の彼女。こうやって俺のことを考えておしゃれな店に連れて来てくれたりする。嬉しいけど、正直俺は将来をそんなに真剣に考えてない。莉帆とは正反対で、結構いい加減な奴や。
「あ、聞いて!あたし企画任されてん!!」
「へぇーすごいやん」
「やろ?」
「どんな企画?」
「ずばり、女と男の価値観の違い!」
「……素敵やね」
「もうっ!真面目に聞いて」
莉帆は雑誌の出版社に勤めていて、現在女性雑誌を担当してるらしい。
着々と夢に向かって仕事をこなす莉帆に対する嫉妬と、自分への諦め…それと情けなさ。複雑な感情に悩まされるこの頃。
「決まった!」
「あ?」
「就職!内定もらえたねん!!」
「おーまじで!?」
晴れ晴れとした笑顔で報告に来た西脇。
ほらな、世の中意外と甘いねんて。西脇みたいな奴にとっては。
「就職決定祝いやな!」
「おぉ、盛大にしてくれ!莉帆ちゃんも呼べや」
「ん?あー、あいつ多分仕事」
「そっか。つーか陸、お前いい加減どうするん?」
「またその話」
明らかに嫌な顔をしてしまった。軽くノイローゼ気味…いや、ただの現実逃避や。
「この前たまたま莉帆ちゃんに会った」
「…ふーん」
「お前女に心配されてどうすんねん。バシッと就職先決めて安心させたれや」
「んー」
分かってはいるけど、なかなか。芸術方面の仕事は自分の才能がなければ苦しいだけの世界。それの不安もありつつ、かと言ってサラリーマンになる予定はない。残るは…フリーター?どこまでいい加減な奴なんやろか俺は。