麻薬 Scene2-2
「なんだか、最近休みの日も会ってない?あたし達」
日曜日の昼下がり。カーテンで薄暗くした寝室のベッドの中で、沙希が起き上がった。
白い体が、まだ少し汗ばんでいる。
一戦交えた後だから、当たり前か。
「・・・そーか?前からちょくちょく会ってないっけ」
まだ寝転んだまま、沙希の腕を引っ張りもう一度抱き寄せる。
おとなしく俺の肩に頭を乗せて、沙希は俺を見上げた。
「大輔って、ほんと性欲旺盛よね・・・高校生みたい」
「褒めてんの?」
「うん。・・・サカリのついた猫みたい。いつもいつもエッチしてないと不満、みたいな」
「・・・沙希と、だからだよ。俺と・・・休みの日も、会うのイヤか?」
この質問は、勇気が要った。
沙希は、俺の身体に腕を巻きつけて目を閉じた。
「イヤだったら、来るわけないでしょ」
だよな。
俺、ちょっとは自惚れていいんだろうか・・・
沙希が、寝息を立て始めた。一戦、と言えども焦らして焦らして攻めまくったから、疲れてて当然だ。
俺も眠くなってきた。
沙希の胸を触りながら、目を閉じた。
どこかで電子音がしている・・・
うっすら目を開けると、部屋の中はすっかり暗くなっていた。
腕が痺れて痛い。頭を回すと、沙希がめずらしくおとなしく眠っている。
大体、俺の身体は蹴るわ、顔にチョップするわで動き回っている。
こいつの寝相だけ何とかして欲しい。寝言も言うし。電子音はまだ続いていた。まだ朦朧とした頭で、ベッドサイドのテーブルに手を伸ばして電子音の音源を掴み取る。
目を閉じたまま、ディスプレイをパカっと開いた。ボタンを押す。
「ん・・・大輔・・・?」
バックライトの眩しさで、沙希が目を覚ました。ケータイでなく、沙希の方を向いた。
「何してんのぉ・・・?」
「あれ、起こした?ケータイ鳴ってたからさ。悪いな」
そのまま、ケータイを閉じる。
「ふうん・・・・・・あっ!それ、あたしのケータイ!」
沙希ががばっと起き上がった。俺の手からひったくる。
「え?お前の?いつの間に、そこに置いてた?」
「途中、トイレ行ってその時にそこに置いてたの。やだもう、勝手に見ないでよー!」
「しゃーねーじゃん・・・半分寝てたし。音が俺のかと思ったんだよ」
「もう・・・信じられないよー。あたしが起きなかったら、見られてたのかと思うと・・・」
しきりに文句を言いながら、もう一度テーブルに置きなおす。
再び、疑惑が俺の頭をもたげる。
「俺に見られたくない相手から、連絡でもあるのかよ」
「え?」
「・・・お前、誰かいんのか?」
沙希が一瞬だけ動揺したのが分かった。
「いないよ・・・何言ってんの・・・」
「俺以外で、ヤッてる奴いるんだろ」
「いないよ!いきなり、何よ、変なこと・・・」
沙希が、ベッドから出ようとした。腕を掴み、押し倒す。スプリングが軋んだ。
「きゃっ・・・!」
沙希が俺を睨んだ。
「やめてよ!・・・いきなり変なこと言い出して、何する気よ!」
手首を更に強く握ってやると、沙希の眉間に皺が寄った。
「いたっ!」
「ホントのこと言われたら、怒る奴っているよな」
沙希がもう一度睨みつけた。
「それが、あたしだってゆうの!?バカにしないでよ!例え、大輔以外にしてる人がいたって、関係ないでしょ!」
関係ない。ー俺には、関係ないのかよ。この俺に?
「認めるのかよ」
「例えばって言ったでしょ!離してよ!あたし、帰る!」
身体をよじらせてもがく。
「帰って、別の男にやられる訳?」
「いい加減にしてよ!!」
俺以外の男に抱かれる沙希の姿が、頭をよぎった。
俺に抱かれているように、喘ぎよがる姿・・・