恋愛宣言-7
「…っう〜、うえ〜ん…ふぃ〜…っく、っうぅ…」
ごめんね、レイナちゃん…。
あたしの足元からすっと、復帰した広夢が生えてきた。広夢は制服を正ながら、レイナちゃんの前に行く。見上げるレイナちゃんに、広夢は優しい口調で
「レイナ…ちゃん。君の気持ちはすごく嬉しいよ。本当だよ?でもね、俺、春嬉さんにしかひかれないんだ。たぶん、俺と春嬉さんは運命だから…。だから、俺は春嬉さんしか好きになれない。君の気持ちには答えられないよ。ごめんね…?」
と言った。
優しすぎだよ、バカ…。
レイナちゃんは消え入るような声で「はぃ…」と言うと、涙を拭きながらあたしたちの前を通り過ぎていった。
これで丸く納まる筈なのに、存在を忘れられた亜美がキレた!!怒りの矛先は可哀相に、レイナちゃん…。
「ちょっとあんた待ちなさい。まず、アタシの話聞いてけ」
亜美はほっとこう。先輩には敬語だの、態度は一歩後ろだの…レイナちゃんの心中察してあげて。
「で、春嬉さん?俺、今すごい喜んでるんだけど、分かる?」
目を輝かしている広夢をあたしは見上げて、笑いかける。
「うん、すっごい分かる。目が素晴らしいもん!キラキラしてる」
そう言うと、広夢はあたしをギュっと抱き締めた。
「俺、春嬉さんのこと、絶対大事にします。本気で好き、大好きっ!!」
あぁ、恥ずかしい…死ぬ程。でも、亜美はレイナちゃんに説教中だし、庭園にはまだ誰もいないし…。
あたしも、広夢の背中にそっと腕を回して抱き締め返した。
あたしたちの周りだけ、甘く優しい空気が流れているようだった。
どちらからともなくゆっくり離れる。あたしは、上目遣いに広夢の顔を覗き込んだ。二ヤニヤ楽しそうに笑う広夢。
バカ…!
「かくして、恋愛とは溺れるものであり、堕ちるものではなぁい!」
亜美の方に目をやると、どうやら自分の恋愛論を熱く語っていたようで、それを聞いていたレイナちゃんは「はいっ、悟りました!」と言って、亜美を尊敬の眼差しで見ている。
「行ってよし!」
「あしゃーっした!」
レイナちゃんはスポーツ風挨拶をし、深々とお辞儀をして今度こそ本当に帰っていった。
あたしの周りには変な人しかいないのか?
「二人のお話は終わった?」
スッキリした顔の亜美が歩いてくる。
「うん!」
「亜美さん!俺たち、ラヴぅくなりますっ」
広夢はあたしと肩を組んで、自分の前でぐっと拳を握った。うんうん、と腕を組み満足気に頷く亜美。
「そうかそうか!!でもね、あんたら見てても悲しいことに腹は充たされないの。ご飯、ご飯〜!!」
今考えると、気紛れ神様は半年も前から仕掛けてたみたい…。偶然?必然?んなこたぁ、この際どうだっていいっ!
ロマンチックではないけれど、綺麗とは言えないけれど、でもすごく素敵で楽しい恋は出来るみたいだよ!
相手が広夢で本当に良かった…!!
あたしは、亜美が傍にある水道で手を洗ってる間、広夢こっそりに耳打ちした。
「好き」
一瞬驚いた顔をした広夢だけどすぐに、子猫みたいな笑顔になると「ありがとーうっ!!」と言って私の頭をくしゃくしゃ撫でてくれた。すごく…すごく、幸せだぁ…。
秋葉 春嬉、17歳。
梶 広夢にどこまでも恋することを、梶 広夢と本気で恋愛していくことを、ここに誓います!