恋愛宣言-3
あたしは、ちらっと広夢先輩を盗み見る。
…カラスと戯れる姿はバカ丸出し。
「広夢さぁーん!春嬉お付き合いしてくれるってぇ!!」
…亜美!?
「ちょ、待って…」
あんた、あたしの話聞く気ないんだね。
「本当っすかぁぁ!?」
砂埃を上げて、嬉しそうな顔をした広夢先輩が駆け寄ってくる。
「本当だよ、ね?春嬉」
「へっ…え?…あ…う、ん?」
もう頭の中はパニック。脳みそ内でリオのカーニバルが開催されてる…!
「春嬉さん、ありがとうございます!一生ついていきますっ!!」
「は、はぁ…」
この笑顔にゃ適わない。断れないじゃぁぁーんっ!!
亜美はブォンブォン音がするんじゃないかってくらい、勢い良く手を振って帰っていった。
あたしを置いてって。
どうすりゃいいんじゃい。この、カラスと戯れる先輩と二人っきりで…。話したこともなくて、今日初めて存在知って…。そりゃ、素敵ハプニング起きないかすぃら♪なんて淡い期待を抱いていたさ。運命やら何やらほざいていたさ。でも、待てよと!これじゃあ、ハプニングじゃなくちょっとした事件だろ!!名付けて、春嬉の将来グダグダ事件。あんな大勢の人の前で、あんな恥ずかしいこと言われて、明日からどんな顔して生きてけばいいの?
「カァ、カ?カァァ!」
…カラスと楽しそうに会話してんなよ。ていうか、あたし、この変な人と付き合ってるんだよね。あたしの彼氏なんだよね。これが、あたしの初めての彼氏なんだよね。あーあ、あたし終わった。
「春嬉さんっ!!」
「んなっ、何!?」
あー、びっくりした。急に日本語喋んないで。
「つまんないっスか?」
「ぇ、いや、別に…」
うん、かなり!
「本当すか」
「はい、大丈夫です」
なわけ無いでしょうが。
「………」
「………ん?」
そんなにじっと見つめられると、恥ずかしい。
「嘘付かないで下さい」
「え?」
「何でもないっす!」
そう言って、ニコッと白い歯を見せて笑った。そしてまた、カラスと遊びだす。だけど、あたしは心がちくんと痛むのを感じた。
…あたし…悪いことしちゃったかなぁ。見た目はどうあれ、あたしに好意を寄せてくれてんだもん。態度悪過ぎだよね…。
つか、何で野性のカラスがあんだけ集まってくんの?変人というより、超人(鳥人)?
「っくふっ…」
ヤバいヤバい…。あまりにもうまかったから、吹き出しちゃった。
そしたら、何を勘違いしたのか「あぁー♪」とカラスを付けたまま、先輩が寄ってきた。
「やっぱり!」
「何がですか?」
ていうか、カラスなんとかして。あたし、襲われかけてますが!
「しかめっ面も好きだったけど」
はい?
「笑った顔の方が可愛いっすね!」
……はいっ!?
お腹の底の方からマッハで熱くなってくるのが分かる。それはもう、顔に来て耳にきて、頭のてっぺんまで到達して。さっと顔を伏せた。
「その…カラス、何とかして下さい…」
先輩が「はぁい」と言ってカラスを空へ還しているところを見ると、どうやら声は聞こえたらしい。
「春嬉さん、自分らも帰りましょう」
広夢先輩が隣で呟いた。
「もう、他の生徒は帰りました。大丈夫です!」
あたしは黙って頷くと、既に歩き出している先輩の隣に並んだ。