「向こう側」第三話-2
「あのさ、さっきから聞いてて思ったんだけどさ、別にそいつ中心に考える必要はないんじゃない?いても足手まといになるだけだし敵に渡るとまずいならさ、消せばいいじゃんこんな奴」
スグルは開いた口がふさがらなかった。まさかこんなとこで自分を抹殺する案が出るとは思わなかった。
「あのなぁ、おまえよくそんな事が…」
ミスズに詰め寄ろうとしたバッジだったがヴェラマージが制した。
「ミスズよ、スグルは我々にとってなくてはならぬ存在なのじゃ」
「…根拠は?」
「スグルが『平和の塔』にある扉の鍵になる。とわしは踏んでいるからじゃ」
「ふ〜ん…ま、別にいいけど、あたし達の邪魔だけはしないでよ」
部屋全体に重い空気が流れ込む。しばらくたった後ヴェラマージが口を開く。
「よし、今日の話し合いはここまでにしようかの。各自自分の部屋に戻るように。それと、バッジはスグルを空いてる部屋に案内するように」
「うぇ!?なんで俺が?」
「さきほどの自己紹介でわからないことがあったら何でも聞いてくれ、と言ったのは誰だったかの?」
ヴェラマージはいたずらに微笑んだ。
「あのじぃさん年関係なく物覚えがいいんだよなぁ…ま、仕方ねぇか、おまえの部屋に案内してやるよ」
そう言うとバッジはエントランスを通って階段を昇りはじめた。
「空いてる部屋なんてあるんですか?」
廊下にさしかかったときにスグルはバッジにたずねた。
「ああ、まあな、もしもの時や来客時に空き部屋を備えてんだよ。ついたぞ、ここだ」
そう言うとバッジは扉を開けた。
そこはあまり使っていない空き部屋とは思えないほどきれいに保たれていた。
おそらくマリーが定期的に掃除をしているからであろう。
少なくともスグルがいつも使っている部屋より大きく、清潔感漂う内装である。
「ここの部屋ってどのくらい使ってなかったんですか?」
「ん…まぁそうだな…七年前から誰も使ってないなぁ。この部屋じゃ不満か?」
「いや別にそういう訳じゃないんですけど…ただ単なる空き部屋にしてはもったいないというか、なんか変な感じがするんですよね」
「ふーん…ま、気のせいだろ慣れない世界だからまだどこかで受け入れられない部分があるだけじゃないのか」
そんなもんなのかなとスグルは思い、違和感についてはあまり気にしないことにした。
「あと勝手にこの家から外に出ようとすんなよ。他の連中と関わると何があるかわからないからな。何か聞きたいこととかある?」
「えっ…と、ここの世界についていろいろききたいんですけどいいですか?」
「おう、いいぜ、何でもききな」
そう言うとバッジは部屋にあったベッドに座った。
スグルも近くにあるいすに座る。