『HIDDEN AFFAIR 2nd secret』-2
『HIDDENAFFAIR』
ぱたん。
直した文集がまた倒れて挨が舞った。
「けほっ!うぁ…」
「大丈夫かよ?」
湊は慌てて立ち上がり、駆け寄る。
「ゴホッ、うん。平気よ。メガネ、挨かぶっちゃった」
ハンカチをポケットから取りだし、メガネを外して拭いた。
その光景をじっと眺める湊。その視線に気付く。
「なぁに?」
「い、いや、やっぱさぁ。メガネ取ったほうがいいかもって…」
そう言う顔は赤い。
「取ったら見えなくなるわ」
笑って元に戻す。
「コンタクトにでもすれば…、いや、やっぱいいや…」
「へんなコね」
再び文集の方に目を移す。
「あ、あのさ、先生」
「うん?」
「俺結構、単純だし不器用だから気付くと思ったんだけど…」
「何に?」
湊の方に目をやると、真っ赤な顔のまま雛子の方をじっと見つめている。
「でなきゃ…、本ギライの俺がわざわざ図書委員なんかなったりしねぇし…」
ぶつぶつと独り言の様に呟いている。
「?」
そして思い切ったようにぎゅっと目を閉じた。
「だから…っ、好きなんだよ…。先生が」
そこまで言うと、そっと目を開く。しかし、雛子の反応が恐くて見ることができない。
−言っちまった…。
視線の先には彼女の爪先がある。
「結城君」
「はいぃっ!」
思わず姿勢を正す。
目の前に雛子の笑顔があった。
「せんせ…」
見とれてしまいそうな程、まばゆい。
「ありがとうね。あたしも結城君のこと大好きよ」
「え…、てことは…」
嬉しさの余り手が雛子を抱く体勢になったが、雛子はくるっと身を翻す。
「びっくりしちゃった。なんだか昔と同じなんだもん」
「へ?むかし?」
雛子は頬を赤らめて話す。
「あたしがね、図書委員でここで今みたいに整理してるときにね、同じ委員の男の子に結城君と同じこと言われたことあったから」
「はぁ…」
雛子の唐突な思い出話にキョトンとする湊。
「びっくりしちゃった」
そんな湊にはお構い無しに照れ臭そうに笑っている。
−いや、今は俺のことでしょ?それよりも。
心の中でツッコミを入れる。
雛子はぽーっと上気した顔で目を閉じる。
すっかり思い出に耽っているようだ。湊の告白などなかったことのように。
「そのあと、いきなりキスしたんだよ、その子。驚いて平手しちゃった」
「じゃ、じゃあ、俺が今キスしたら撲たれるわけだ」
−そんな昔の奴のことなんかどーでもいいんだよ!
自分の方に意識を向かせようとする。
「あはは。そんなことはしないだろうけど…」
雛子が言い終わらないうちに口を塞がれた。
「ンッ…」
壁際に押さえ込まれる。
しばらくして、口を離すと湊は荒々しく息を吐いた。
「乱暴だよ…、結城君」
「お、俺は、キス以上のこともしますよ」
目が血走っている。
しかし、雛子は落ち着いた様子だ。
「ていっ!」
「痛っ!」
湊は額にチョップをもらった。
「最近の若い子は身体ばっかりなんだから」
しかめ面で幼子を叱るような口調だ。それは港の癪に障った。
「俺は別に身体が目当てなわけじゃないですよ!先生がまともに聞いてくんないから…」
雛子は湊の両手をギュッと握る。
「だったら力で言うこと聞かせようとしないで、もっと優しくしてほしいな」
「や、優しく?」
「優しく背中に腕を回して」
握った手を促す。
「こうですか…?」
「もっと強くしてもいいよ」
「えっと」
−いいのかな…?
戸惑いながら手を伸ばす。
腰の細さに驚いた。
ぎゅっ…。
「んっ…」
「あっ!きついですか?」
「ううん。きもちいいの」
すり…。
湊の胸元に頬を寄せる。
「せ、先生、俺も…」
女の色香に目が眩む。
「キスは?」
せがむような目で湊を見つめる。
「あっ、はい」
せっつかされるように唇を押し付けた。
「だめよ。もっとゆっくり…。どんなに柔らかいかがわかるわ」
−ゆっくり…。
ふ、にっ。
「ん…」
−ほんとだ。柔らかくてあったかい…。
「ん…ふっ…」
「はぁっ…。せんせ…」
「息荒いよ、結城君…」
見上げる顔が笑っている。