混沌とした世界(中編)-9
フェルベーク伯爵領では、罪人は女性と交わる刑罰を受ける。女性と交わるのは家畜と交わるのと同じだと蔑まれる行為とされていた。
女性だけの居住地があり、そこはメスの巣と呼ばれている。
授乳の時期が過ぎると男児はメスの巣から連れ出される。女児はそのままメスの巣で育てられる。
罪人は女性に種づけを、監禁拘束されて強要される。男児を孕ませれば恩赦で釈放される。それまでは名前も与えられない「メス」に毎日、逸物から精液を搾り取られる。
女性の居住地「メスの巣」は流刑地。そこで生まれて、闘技場での活躍した者や何かしらの知識や技術を身につけた者には、貴族の保護者に選ばれることで市民の地位か与えられる。
見た目で貴族に気に入られて市民になる少年や青年もいる。選ばれなければ、貴族や市民の暮らす街ではなく村で農夫として暮らす。
貴族たちにすれば、村は娼館のようなものである。一夜限りで村人に奉仕させて村人に金や食糧などを施す。
シャンリーは貢ぎ物として選ばれて、村から連れて来られた少年に変装して、領主の邸宅へ侵入した。もともと美少女のエステルは変装すると、かなりの美少年になりすますことができた。
フェルベーク伯爵領では女性は名前がなく「メス」と呼ばれ、貴族や市民が暮らす街や平民階級の男性が生活する村から隔離されていた。
男性の同性愛者を育てるために、女性を同じ人間と認識しないように教え込ませて育てる。
恋愛は少年や青年が男性どうしとするもので、女性と交わるのは罪人か、家畜の獣と交わるのと同じ事だと嫌悪感を抱くように教え込まれる。
獣人娘のアルテリスがフェルベーク伯爵領の状況を知ったら、激怒するだろう。貴族と平民という階級で扱われるのも嫌いなアルテリスが、女性であるだけで蔑まれる態度を取られたら、こう叫んで殴りつけるだろう。
「なんなんだ、女の花から産んでもらったくせに!」
バーデルの都を密かに蛇神の贄を捧げる巨大な祭壇のような場所にすれば、ヴァルハザードはより力を得ることができると、ゴーディエ男爵は聞かされている。
フェルベーク伯爵領の「メス」たちは贄にされるように育て上げられていると、ゴーディエ男爵は思った。
ゴーディエは男色家ではない。
「メスの巣」を密かに訪れて、魔族の眷族に覚醒する女性がいないか探した。
犯しながら生き血を死ぬギリギリまで啜り、覚醒するのに期待した。
目深にフードを下ろし、漆黒のロープをまとったゴーディエ男爵の変化した真紅の瞳に見つめられた女性は、恐怖と欲情を同時に感じて困惑する。
ほっそりとした首すじや心臓に近い左の白い乳房に牙を立てられ、生き血を啜られると、ひたすらあえぎ声を上げ、艶かしく身悶え、恍惚とした表情を浮かべながら、快感のあまり、涙や半開きの唇の端からよだれを垂れ流す。
「ふふふっ、これ以上、交われば死ぬかもしれない。ここで止めてやることもできるぞ」
「あぁ、もっと、気持ちいいの、あぁ、死んでもいいっ、もっと犯してっ!」
年齢でいえば20代後半ぐらいだろう。ゴーディエ男爵に家に侵入され「メス」は衣服を強引に引き裂かれて、ベッドに押し倒されている。
処女ではなかったので、罪人との交わりは経験済みのようだった。
男性に積極的に体を求められたことがない。男性は嫌がり逃げるので、手で逸物を扱いて射精させ、精液を自分の指て牝の花の奥へ塗りつけたり、強引に口の中に射精させた「メス」が、別の「メス」の股間に顔を埋めて、牝の花に唇を押しつけて流し込むなどの行為が行われていたのである。
ゴーディエ男爵のように激しく突き入れてきて、腰を打ちつけるように動かされたことはなかった。
「あひぃぃ、中に出てるぅ、熱いのいっぱい、んああぁっ!」
のけ反ってびくっびくっと痙攣しながら絶頂の声を上げた「メス」の乳房に、ゴーディエ男爵は牙を立てた。
「んはあぁ、死ぬぅ、あぁぁっ!」
ぬちゅくちゅっと湿った音が響き続けている。射精しても生き血を啜り興奮して勃起し続けている逸物で、犯し続けている。牝の花は愛蜜と精液が白く泡立って卑猥な音をさせて痙攣していた。
(このまま衰弱して死ぬか、覚醒するかどちらだろう?)
ゴーディエ男爵は気絶した「メス」をベッドから降りて見下ろしていた。
「えっ、誰?」
出かけていたらしい一緒に暮らしている「メス」が全裸のゴーディエ男爵の細身だが筋肉がついたしなやかな背中を見つめてうろたえていた。
「メス」の中には同棲している者もいると交わりながら聞き出していた。
街の住人たちは「メス」や「メスの巣」について口にするのも避けているので、ゴーディエ男爵は実際に「メスの巣」に密かに訪れて、犯しながら情報を聞き出している。
気絶している「メス」より少し若い見た目で、髪は肩ぐらいにすっきりと切りそろえている。気絶している「メス」のように長めの髪を結んで束ねている髪型の者が多い。
「別の伯爵領から来た女か?」
「あ、あなた、この人に何をしたの?」
「合意の上で交わっただけだが」
ゴーディエ男爵は、逃げようとした女性の手首をつかんで強引に引き寄せ、抱きしめる。
「私も犯す気なの?!」
「気が強い女だ。いろいろ話を聞かせてくれたら、犯さないでおいてやる」
怯えながらも、強気な女性の華奢な身体を抱きしめて耳もとでゴーディエ男爵は落ち着いた口調で囁いた。
それが逆に女性には不気味だった。興奮して襲いかかられるほうが理解できる。
「逃げないから、離してっ、んっ!」
「耳が感じやすいのか」
ゴーディエ男爵は、女性の小さめな耳を軽く舐めて言った。耳のかたちは悪くないとゴーディエ男爵が微笑する。耳は大きさやかたちが似ているようで、よく見ると個人差がある。
「このまま話せばいい。名前は?」
フェルベーク伯爵領の「メス」には、名前が与えられていない。