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Sorcery doll (ソーサリー・ドール)
【ファンタジー 官能小説】

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レナードの覚醒(中編)-9

意識の戻らないアネットの状態をローマン王にとっては不吉な兆しと考え、出産に立ち会った者たちは、先に生まれてきた赤ん坊だけを後宮に残した。
ロンダール伯爵の一族の呪術師たちは、双子のかたわれを密かに連れ去った。双子は忌み子と呼ばれ、親や一緒に生まれた子に呪詛をかけるのには最適な贄なので、双子が生まれるとひとりを殺してしまう風習がある。
ロンダール伯爵の一族の呪術師たちは、普段は呪術師であることを隠し、後宮で出産の手助けをしている者たちもいた。名前もあたえられずに育てられた。
ローマン王には、側室のアネットが双子を産んだ事は知らされなかった。
ロンダール伯爵はまだ幼い。ロンダール伯爵の父親、先代の呪術師たちの当主であるラーフェン伯爵は神聖教団と、ターレン王国での布教の補佐をする代わりに寄付金の一部を得る契約を神聖教団と結ぼうと画策していた。
ローマン王に呪詛をかけ、治療を神聖教団の者が行うという計画のために、ローマン王へ呪詛を伝播する人物をラーフェン伯爵は占い、ゼルキス王国のクリフトフという人物だとわかると、呪術師ダリヤに忌み子を使い呪詛をかけるように命じた。
呪詛の病は採取された薬草などでは治療できない。神聖教団の者がローマン王を治癒の法術で癒せば、ダリヤは呪詛返しの影響で死ぬ。
クリフトフの7歳の娘フレイヤに妨害されなくても、呪術師ダリヤは死ぬ役割を命じられていたのである。
しかし、神聖教団はターレン王国への布教から手を引いた。
教祖ヴァルハザードの復活の兆しがあらわれたからである。
呪術師ダリヤが、未亡人シャンリーに蛇神の儀式のナイフを渡し、ゼルキス王国に潜入すると、偽名を使いクリフトフに近づき関係を持った。
呪術師ダリヤは、蛇神のナイフで呪詛の儀式を行わなかったので、贄のレナードを餓死させる方法で呪詛を実行した。
ローマン王は眠りの時間が増えていく、呪詛されたリヒター伯爵と同じ状態に陥る呪いを受けなかった。
レナードが餓死、クリフトフの娘フレイヤも高熱で衰弱して死んでいれは、ダリヤは、子を亡くして傷心のクリフトフの元から離れて、シャンリーのいるターレン王国へ戻るつもりだった。
クリフトフは相手が呪術師ダリヤであるとは知らず、辺境の村から幼い子を連れて、暴力をふるう夫から逃げてきた人妻だという話を信じた。親切なクリフトフに惚れたという言葉を信じた。
しかし、少女フレイヤは連れ子の男の子が母親に怯えているのに気づいていた。
だから、ダリヤのことを警戒していた。

(チッ、勘の鋭い子供は嫌いだよ!)

シャンリーは、ゼルキス王国から帰らなかった呪術師ダリヤとして、神聖教団の協力者として連絡を取っていた。
死んでいるダリヤになりすましていたことを利用して、シャンリーはロンダール伯爵と関わりを持った。ダリヤがシャンリーだったという嘘の話を聞いても、ロンダール伯爵はそういうこともあるだろうと深く追及はしなかった。
シャンリーとロンダール伯爵が面会した時、シャンリーは女伯爵の爵位をランベール王から授かっていて、身分としては対等だった。
シャンリーはロンダール伯爵とフェルベーク伯爵から衛兵を貸りて、盗賊団と警備兵が闇市を開いて仕切っているバーデルの都に乗り込んだ。

ランベール王とは双子で、身体のつながりが強いレナードに、賢者マキシミリアンたちが精霊たちの力で自我を身体から先に目覚めさせる術を施すと決めた夜、ランベール王のためにローマン王を毒殺したメイドのアーニャの亡霊は、踊り子の護りの舞踏が行われなくなったことで消滅せずに後宮にいた。
側室たちの長年の嫉妬や怨念の力や、王都トルネリカまで流れ込んでいる蛇神の異界の障気はアーニャの亡霊にも影響を与えている。
ランベールの身体を奪っているローマン王を憎んでいるアーニャの亡霊は、魔物に変化しようとしていた。

ウィル・オ・ウィスプやイグニス・ファトゥウスとも呼ばれる魔物。視る力のある者には、空中を漂う妖しい光の球体として認識される。
ダンジョンや神殿で特別な結界を作った場ではないはずの後宮は、魔物が生成されるほど穢れに満ちていた。

辺境の焼き討ちにされた村で、ガルドや手下たちに凌辱された女性たちの亡霊だった5人の精霊たちは、朝まで話し合っていた。賢者マキシミリアンの提案を受け入れて、試してみることで意見がまとまった。

ランベール王の身体からローマン王の亡霊を追い出したいウィル・オ・ウィスプまたはイグニス・ファトゥウスに変化したアーニャの亡霊。
レナードの心に感情を取り戻すために、呪いを解きたい元亡霊の精霊フェアリーたち。

ストラウク伯爵領の山の中と、王都トルネリカの後宮で、ランベール王とレナードにかけられたシャンリーの呪詛に対抗する戦いが始まろうとしていた。

凶運によって運命の流れによって死んでしまったり、滅びていくはずのもの。
ローマン王を毒殺したとして火炙りの刑で処刑されたアーニャ。
傭兵ガルドと手下たちによって凌辱されて、焼き殺された村娘たち。
しかし、異界の門が開き、王都トルネリカの護り人である踊り子アルバータが、魔族の眷属ヴァンピールに変えられたことで、アーニャの亡霊は消滅せずに魔物として生成された。
焼き討ちされた村へ僧侶リーナとアルテリスが立ち寄り、怨霊として呪物の人骨の力となる前に、祈りによって5人の亡霊は精霊フェアリーに生成された。
凶運で命を落とし滅びるはずだった彼女たちは、結果として協力し合うような運命の選択をした。
ランベールの心は滅び、レナードの身体は虚脱している。ランベールとレナードも凶運に襲われた者たちであった。

マリカ、アルテリス、セレスティーヌは起きて朝風呂で温泉に入った。
マリカは温泉から上がると、朝食の準備を始めた。
ストラウク伯爵、テスティーノ伯爵、マキシミリアン公爵は、酔いつぶれ居間でごろんと寝そべった姿勢で、眠り込んでいた。


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