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Sorcery doll (ソーサリー・ドール)
【ファンタジー 官能小説】

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レナードの覚醒(中編)-8

もしも牡のリングと牝の指輪をつけているニルスとエイミーがいれば、マキシミリアンが魔力の強いエルフ族のセレスティーヌとのあいだにミレイユを授かった魔力の均衡について知りたがったにちがいない。このふたりは、子を授かりたいと願っていた。

ストラウク伯爵もマリカとのあいだに子を授かりたいと願っているので、賢者マキシミリアンに子を授かるコツを質問した。ロンダール伯爵がニルスとエイミーに話したように魔力の均衡の話をした。しかし、マキシミリアンはそれだけでは話が終わらない。テスティーノ伯爵とストラウク伯爵領の村娘アカネとのあいだにマリカが生まれたことや、アカネが長生きできなかったことが気になってなると話し始めた。
ロンダール伯爵は生まれた子に親が力を譲ってしまい護りが弱まって、命を落とすことがあるとエイミーに話していた。セレスティーヌは、ミレイユを産んだが生きている。ヘレーネの母親やアカネは亡くなった。このちがいは何かを賢者マキシミリアンは考えていたらしい。

(レナードのことや蛇神の祟りの事も考えながら、ずいぶんいろいろなことを考えておられる人だ)

ストラウク伯爵は賢者マキシミリアンに感心していた。ストラウク伯爵はひとつひとつをじっくり考えて突き詰めていく考え方をする人だった。

前世の因果というものが影響しているのではないかと、賢者マキシミリアンはテスティーノ伯爵に言った。
ヘレーネを産んだアリーダは、ヘレーネを産む役目で過去から来て、役目を果たして死んだ。そうなることがわかっていて、愛するリィーレリアのために命がけの役目を果たした。
アカネはテスティーノ伯爵が受けるはずの凶運により、テスティーノ伯爵自身は魔力の護りがあるために、伴侶のアカネが身代わりになった。ロンダール伯爵の場合は、結果としてステファニーという少女を呪術で身代わりにした。
リヒター伯爵は、呪いの凶運の影響で自ら呪詛にかかった。
呪いとは、人の運命を凶運へと導く力である。

「セレスティーヌはミレイユを産んでとても愛しているけれど、僕がいなくなっても祓う力を持つ子を残したくて、ミレイユを聖騎士にしてしまった。ミレイユは魔力が強すぎるのと、伴侶になった女神ノクティスが男性と交わるのを嫌うので子を産むことはできない。僕はセレスティーヌの愛している娘の運命の選択を奪ってしまったことを後悔して背負って生きることにしたんですよ。ミレイユとノクティスの力はこの世界には必要だけど、それとセレスティーヌがミレイユの運命に感じる悲しみは別ですから」

ストラウク伯爵がこの浄化の儀式の前にマリカに子を産ませていれば、ストラウク伯爵が受ける凶運は子を産んで力を譲った伴侶のマリカが身代わりとなっていただろう。
マリカの母親のアカネが、愛するテスティーノ伯爵の凶運を身代わりに受けて終わらせたように。

「レナードはクリフトフの養子ですが、死んだ呪術師が本当の母親とは限らないので、父親や母親が誰かはわからない。呪術師が、ターレン王国から来たとすれば、ローマン王やランベール王と関係がある者かもしれません。双子とは限りませんがね」

ハンターギルド長のクリフトフと関係を持ち、レナードを呪詛の贄として抹殺しようとした呪術師ダリヤ。ロンダール伯爵の一族の女性は、レナードの出生に関する事実を何か知っていたのか。
ダリヤは自分の身代わりとして、クリフトフの娘フレイヤを選んだ。ローマン王を呪殺する目的を成就することで術師も命を落とす。それを避けるには身代わりが必要だった。クリフトフとフレイヤとレナード、3人の命を代償として、ローマン王の命ひとつを奪う。

「自分や妻のセレスティーヌがいなくなっても、同じ役割を果たしてくれる聖騎士が必要だと考えていましたが、実際は同じ運命や役割を持つ者は誰もいない。それを実感しただけでした」
「兄者、私にはカルヴィーノとマリカという2人の子を授かった。けれど、兄妹で、それぞれの考えを持ち行動して生きている。親の望み通りの生き方をするわけではないのを私も実感しています」

ストラウク伯爵がマリカとのあいだに子を授かるコツを賢者マキシミリアンに質問したことから、親と子がそれぞれ別の運命の選択をしながら生きていくということまで話し合うことになった。

「親の持つ力を継承させても、運命はそれぞれちがうということですな」
「記憶していなくても、前世からの因果があれば出会ったり、協力しあうことや憎みあうことなどもあるかもしれませんからね。僕らも生まれた国や親がちがっていても、似たような力について考え、使ってきたわけで、運命とは不思議なものだと僕はいつも思っています」

男性3人が自分で選ぶ運命と生まれた時にすでに定められている運命について、それぞれの思いを語りながら、酒を酌み交わしていた。

「私とテスティーノは同じ師匠に武術を習った兄弟弟子で、今では本当の兄弟のようなものですが、こうして話していると伯爵様も私たちの兄弟のように思えてきますな」
「そうですね、兄上」
「はははっ、それなら、僕が一番若いから、貴方たちの弟ですね」

その頃、精霊はすやすやと眠るレナードのそばに帰り、仲間の精霊たちに賢者マキシミリアンから聞いてきたことを話して、小声で朝まで相談していた。
アルテリスとマリカとセレスティーヌは話し合う必要もなく、自分たちの伴侶のやりたいようにさせるしかないと意見が一致して、もう布団を並べて敷いて寝ていた。度胸の座っている3人の女性たちである。

レナードは忌み子であった。
ランベール王の母親、ローマン王の後宮の妻妾アネットは、双子の男児を産んですぐ、そのまま意識を失い亡くなってしまった。
後宮は嫉妬や憎しみの念の力の影響が強い場所である。出産し衰弱したアネットの身体で耐えられるものではなかった。ローマン王には男児が生まれて、アネットの意識がまだ戻っていない事が報告された。


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