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Sorcery doll (ソーサリー・ドール)
【ファンタジー 官能小説】

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婚姻儀式祝福魔法とパンケーキ-5

ザイフェルトは、シナエルの話を聞いていて、結婚前にキスしたらまずくないかとフリーデに小声で質問していた。
それをヘレーネが聞き逃さずに、ザイフェルトとヘレーネに質問した。

「ヘレーネ様、村ではたぶん、おたがい名前や身の上を教えあってキスを交わしたら、それは両想いで結婚を前提におつきあいしたいって意味です。名前や家族の話を隠していて、どこの村の誰かわからないなら、結婚まではこれからという感じで、おつきあいしていることになります。ザイフェルトは、とてもまじめな人なので、結婚前には手もつないでくれませんでしたけど」
「ザイフェルト、手もつないだこともない女性と結婚しようと思ったのか?」

カルヴィーノが驚いた顔で、ザイフェルトに話しかけた。

「ああ、人前で手をつないでいる人を街では見かけるが、そういうことは人に見せるものではないと思っている。そのペオル村と俺の暮らしていた村が同じ考えかたなら、結婚前にキスなどしたら責任を取らないといけないと思う。結婚しないのであれば娘の親に、手を出した男の親が謝罪に行く必要がある」
「貴族と村人たちでは、ずいぶん考え方がちがうもんなんだな」

カルヴィーノが、隣のシナエルにそう話しかけた。シナエルはカルヴィーノに言った

「カル君、貴族か村人のちがいじゃなくて、きっと村暮らしと街暮らしのちがいだよ。住んでるところで考えかたがちがうと思うよ」

リーフェンシュタールは、何も言わずに話を聞いて考えている。ヘレーネは何を考えているかのぞくこともできるが、あえてしなかった。顔立ちが整っていて繊細な雰囲気なので、何かすごいことを考えていそうに見えるが実はそうでもないことを、ヘレーネは知っている。

「そしたらね、次の日に、ロッタが彼氏を連れて来たの。あの店長が私がふたりと上の部屋で話している間は、一人でがんばってくれてた」
「もともと、クルトの父親が一人でやっていた店だ。シナエルが来る前も一人だった。そろそろ店を手伝ってくれる妻をもらったらどうかと話してはある」
「子爵様、店長の好みって、どんな人なのかわからないですよね」
「シナエルぐらい働いてくれそうな女性がいたら、結婚を考えると言っていた」
「えっ、じゃあ、店長、なかなか結婚できないですね」
「ねぇ、シナエル。サムリはロッタのことを、どう思っているのか聞けたの?」

ヘレーネがおだやかな口調で、シナエルに質問した。

サムリは自分の父親に結婚したいと相談して、息子から相手がトレスタの街の御令嬢だと聞いて、なんて失礼なことをしたのかわかっているのか、これからどうすればいいのかと、家族全員で話し合いが行われた。
村長ヴァリオと息子サムリの二人でロッタの父親ヘルムートに謝罪に行くが、許されなかった場合は責任を取って村から出ていくことになるかもしれないと村長ヴァリオの家族内では、かなりの騒ぎになっている。

「なるほど。サムリ本人はロッタを妻に迎えたいと思っている。ロッタも駆け落ちも考えているほど、本気なわけだな。本人たちの問題ではなく、おたがいの親が結婚させられないと思っている」

リヒター伯爵はそう言うと、サムリとロッタが結婚する方法としては2つの方法があるとシナエルに説明した。

婿養子にサムリがなる。
花嫁にロッタがなる。

「サムリが婿養子として婚姻するのがよくある方法だが、これをすると問題があれこれ出てくる。ヘルムートの跡継ぎが婿養子と息子のロッタの弟の二人になって、どちらかはヘルムートの家業を継げなくなってしまう。そして、ペオル村の村長の後継者がいなくなってしまう。もしもヘルムートが、娘を別の貴族に嫁がせるつもりで話を進めていたら、村長ヴァリオをサムリに娘が暴行されたと訴えて、賠償金を請求できる。賠償金は破談になったロッタの伴侶となるはずだった別の貴族に支払われる」
「伯爵様、お金の問題なのですか?」
「ヘルムートに確認してみなければわからないが、別に縁談が進められていたら折り合いをつけるために金銭のやり取りが行われる。ペオル村の村人たちが、村長ヴァリオを助けるために金を出しあって賠償金を払うよりかは、新しい村長を決めて迷惑をかけたヴァリオの家族ごと村から追放する」
「そうなったら、もう結婚どころではありませんね」
「ヘレーネ、平民階級の村人サムリの花嫁に貴族令嬢ロッタがなることは、実はできる。身分階級が低い男性と身分階級の高い女性の婚姻を禁じてしまうと、男爵の男性を伯爵令嬢が婿に迎えて後継者にすることができなくなってしまう。婿養子か花嫁かは関係ない。村長ヴァリオよりも息子のサムリが婚姻によって小貴族となり身分が高くしまうことに、村長ヴァリオが納得できるかどうか。身分が上がったとして実際のところサムリが父親のヴァリオから村長の立場を継いだ時に、村人たちが貴族に支配されていると感じて、自分たちと同じ平民階級の村人を新しい村長にするのか。それは、ヴァリオとサムリの親子が村人たちに信頼されているか、軽蔑されて嫌われているかで変わってくるだろう。ヘルムートは貴族へ娘を嫁がせることで他の貴族階級の者との人脈を得られる。村長の息子サムリに嫁がせると、ロッタと父親のヘルムートは、ペオル村の村人たちとつながりができる。特に村長ヴァリオとはな。貴族階級のヘルムートが、平民階級の村人たちがなれなれしい態度で接してきたと感じたとしたら、また変わってくる。村長ヴァリオと小貴族ヘルムートがどんな考え方や感じ方をしているのか。結婚させるならどちらの方法を望むか。他に縁談を進めていないか。それらを聞き出すのは伯爵である私の役目であろう。私が承認しなければ、婚姻は法的には成立しないのだから」
「伯爵様、私たちの婚姻を承認すると、カルヴィーノの父親テスティーノ伯爵、私の父上のベルツ伯爵、フリーデの兄上ブラウエル伯爵、それぞれ違う考えの人たちとのつながりが生じることになりますね」


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