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Sorcery doll (ソーサリー・ドール)
【ファンタジー 官能小説】

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リーフェンシュタールの結婚(前編)-7

後宮の妻妾は貴族階級の令嬢などが入内するが、貴族階級の者でも裕福な下位の貴族が没落した貴族の者と婚姻して、上位の爵位を継ぐことはある。バルテット伯爵も、婿として下位の男爵の血統だったが婚姻により、伯爵の爵位を継いでいる。貴族とはいえ、先住民を制圧した血筋を濃く維持し続けられているとは限らない。国王に祟られる力が失われたら、次は伯爵の爵位を継いでいる先住民の血統から遠い者から祟られる。
ザイフェルトは先住民を制圧した騎士の末裔。歴代の伯爵がザイフェルトの先祖たちを貴族の血筋の者と婚姻させてきたことで、制圧者の血統を残してきた。他の村人の子供たちよりも制圧者の血を濃く継いでいる子供だった。

「私から言わせれば、ザイフェルトが木登りさえしなければ落ちることもなかったわけで、本人の不注意が一番の原因だったと思います」

ヘレーネがリーフェンシュタールにそう言いながら、レチェの背中を撫でた。

「大怪我する行動をして、死にかけたということですね。産婆の老女が亡くなった年だったことも、その登った樹が生えていた場所が昔の墓所であったことも、ザイフェルトが死にかけたことで祟りとしてつながりができた」
「因縁があることが原因ではなく、生きている者による不注意な行動によって、因縁ができるということです」

「偶然など存在しない。すべて必然の結果なのだ。だが、それを先に予想することは難しい」

モンテサントが弟子たちに言ったことがあると、リーフェンシュタールがヘレーネに聞かせた。

「子供のザイフェルトが木登りをする前に、落ちたら危ないから止めなさいと注意する者がいたら祟りは起きなかった。では逆に、子供のザイフェルトにあの樹のよく熟れた色づいている実をもいできてくれたら褒美をあげるよと言ってみたり、木登りが上手くてもあの実のある枝まではこわくて登れないだろうと言ってみたら、祟りを起こすことができます」

リーフェンシュタールとザイフェルトがハッとした表情で顔を見合せた。

「つまり、祟りを起こそうとしている者がいる。そして祟りを起こそうとする者は、祟られるわけではない。祟りを受ける者が誘導されて行動した結果、事故として祟られるということか」
「リーフェンシュタール様、祟りを阻止するために、ストラウク伯爵とテスティーノ伯爵は、祓魔師の力を持つ子爵カルヴィーノ、いえ、シモンに討伐を頼むことにしました。ストラウク伯爵は、自領で祟りの浄化の儀式を行うため離れられず、テスティーノ伯爵は他に討伐に協力できる者の育成を行っています。私は母ほどではありませんが、子爵カルヴィーノに、ここに来れば会えると感じ、状況を伝えるために来たのです。しかし、子爵カルヴィーノは不在ですし、状況を伝えても過去の因縁があるものを討伐する気になってくれるかまでは、私にもわかりかねます」
「過去の因縁……私にも関係ある話というわけだ。そして、バーデルの都の惨状を強く感じたのは祟りと関係があるのか」
「バーデルの都は、過去に先住民たちと激しい戦が行われた場所に怨念を鎮めるために建造された都で、それ以前は先住民たちの風葬地だったとストラウク伯爵は言っておられました。祟りを誘発させるには、もう気づいておられるのではありませんか?」
「……贄を捧げる。しかし、まさか蛇神の儀式を行っているのか」
「リーフェンシュタール、蛇神の儀式とは何だ?」

リーフェンシュタールは青ざめて、ザイフェルトの質問に答えることができなかった。
なぜなら、蛇神の生贄として前世では惨殺された犠牲者で、リーフェンシュタールはその時の苦痛や悲しみを生々しく思い出していたからてある。

「ザイフェルト、貴方にも関係あることです。貴方は子供の頃に、先住民たちの怨念に祟られた蛇神の贄だから。運命の選択を木登りをした以前のように間違えれば、命を奪われるでしょう。私と貴方がこのトレスタの街へ訪れる途中で会えたのは、過去の因縁が続いているということです。贄に選ばれた貴方は、今でも命を狙われ続けている」
「運命の選択ですか?」
「ええ、選択を間違えなければ、子供の頃に死から逃れたように、生きることができるでしょう。私にわかることはここまで。あとは、貴方が決めることよ」

ザイフェルトは、この時、ヘレーネの助言を聞いた。先住民たちの怨念は、制圧者の末裔を殺す。ベルツ伯爵の子息メルケル、モルガン男爵、ベルマー男爵……貴族殺しを行ってきたことにザイフェルトは気がづいた。

(まるで俺は、怨念に操られて、貴族殺しを続けているようではないか?)

リーフェンシュタールの様子があまりにおかしかったので心配だったが、ヘレーネが震えている手を握っていると、少し落ち着いてきたようだった。

「ザイフェルト、彼女と二人だけで相談したい事があるのだが」
「わかった。ヘレーネ様、リーフェンシュタールをよろしくお願いします」

ザイフェルトはリヒター伯爵の邸宅の客室へ、一人で戻ることになった。
先住民たちの祟りと、人質のフリーデをベルツ伯爵領から奪う相談をリーフェンシュタールに持ちかけそこねたことを一人で考えていた。
リヒター伯爵領でベルツ伯爵領のような祟りが起こらない理由は、途中の村にヘレーネと立ち寄った時のことを思い出しながら考えてみた。
リヒター伯爵領はベルツ伯爵領と比べて貴族が少ない。村人と貴族が結婚して血筋が交わってしまったらしい。トレスタの街に住む小貴族や伯爵の血統の者以外の住人は、平民階級の者がほとんどなのである。つまり祟られる標的が少ない。
ベルツ伯爵から追放され、地主の地位を失い、今は平民階級になったザイフェルトには、ほとんど平民階級の者のリヒター伯爵領の村はとても暮らしやすい気がした。
ベルツ伯爵領でも、地主の血筋が途絶えたり村人の血筋と交わり続けている。

(ベルツ伯爵領も、いずれリヒター伯爵領の村のようになるのかもしれない)


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