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Sorcery doll (ソーサリー・ドール)
【ファンタジー 官能小説】

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祓魔師の乙女たち-3

死地というのは、穢れが集まる場所となり、霊障が起きるために住人が生活するのには適していない土地である。
地脈や水脈などや風の流れなども関係して、穢れが強い土地が形成される。単純に穢れを浄化して、人が暮らせるように解決できないこともある。
参謀官マルティナは、神聖教団がゼルキス王国やターレン王国がある平原地帯から離れたこの土地を死地とすることで、大陸各地の穢れを流し込み、他の大陸の浄化を狙っているのではないかと危惧していた。
死地になりかけている辺境地域を神聖騎士団の祓魔師によって浄化すれば、ゼルキス王国やターレン王国は無事に存続できるかもしれない。その分だけ、遠い他国では穢れの影響が発生するが、それを神聖教団から僧侶や強化者の修道女が派遣され命がけで祓うことになるだろう。

(理屈で考えれば、小国を潰し死地にすることで、大陸各地の均衡を維持することが、正しいのかもしれないけど)

参謀官マルティナとしては、神聖教団はゼルキス王国やターレン王国を、穢れを集める死地にすると判断したのではないかと疑念を抱いている。
2つの小国の住人を贄にして、大陸中の穢れを集めておく死地を完成させる。そのため転送の魔法陣で住人たちを移住させないように、異変に対し神聖教団から神官を増援として派遣することや、国王に対して、住民を移住させる提案などは一切ない。
騎士団幹部会議の前に、参謀官マルティナは、聖騎士ミレイユに対して、自分の抱いた神聖教団に対する疑念を打ち明けていた。

「ミレイユ様、神聖教団が、ゼルキス王国の滅亡まで計画として組み込み、大陸全体の安定のための死地としようとしていた場合、私たちの抵抗は、意味があるのでしょうか?」
「だとしても、私たちが死守しなければゼルキス王国の民は、翻弄されて贄とされてしまう。神聖教団が私たちの行動を妨害せずに静観しているのは、最悪の場合、この地を呪われた死地として活用することができるからだろう」

死守する覚悟で、異界の門をすべて騎士団の祓魔師によって破壊する。そして、辺境の住人を1人でも救出する。
聖騎士ミレイユは、参謀官マルティナにそう答えたのである。参謀官マルティナの命も、聖騎士ミレイユは自分の命を賭けてでも守るつもりなのだと。その返答から察することができた。

(村人の命、私や隊長たちの命と、ミレイユ様の命のどちらを守るかと問われたら、私はミレイユ様の命を守ります)

参謀官マルティナは、聖騎士候補の修道女たちに、過酷な試練を与えることへの迷いがあったが、会議前に聖騎士ミレイユの執務室でふたりで話した時に、迷いを捨てた。

「聖騎士の試練を受けた者たちが、異界から生還しても、心が壊れてしまっていることがほとんどなのは、この場に参列している修道女である貴女たちも存じていることだと思われます。もしも、辺境で発生している異界の門へ引きずり込まれたら、生還できたとしても、まず無事では済まないでしょう。再起不能となる覚悟が必要なのは、聖騎士の試練と同じことです。もし、障気が具現化するほど満ちている状況ともなれば、異界の中に片足を踏み込んでいるようなものです。この任務は強制ではありません。それだけ危険な任務です」

参謀官マルティナは、9人の隊長たちの全員の顔を見渡した。すると、マルティナの目線から顔や目をそらした者はく誰もいなかった。隊長たちは全員、この危険な任務を遂行する気らしいと、その態度や顔つきからわかる。

神聖教団の神官マルティナは、神聖教団の本拠地で、聖騎士の試練のために異界へ渡り、魔物に心が壊されてしまった者たちの処置に従事したことがある。
マルティナは神聖騎士団の9人の隊長たちに、聖騎士ミレイユの許可をもらい、聖騎士の試練に失敗して生還した者たちが、最終的に穢れとなり、祓魔師に祓われるものと成り果てるまでを語った。

「ミレイユ様は、異界で影の女王とも呼ばれる神と契約して魔剣を所持して心が壊されることなく生還しました。どんな禍々しき神が支配する異界に渡るのか、儀式を行う神官にもわからず、生還できずに遺体が魔法陣に戻ってくることがあります。目玉だけであったり、手だけであったり、乳房だけのこともあります。バラバラの遺体ではなく、心が壊された生還者たちについて、貴女たちにここで話しておかなければなりません。これは教団の機密であり、教団の関係者でも限られた者しか知ることが許されていない事となります。教団としては絶対に信者へ伝えてはいけない事実なので、知りたくなければ、今すぐ退席して下さい」

9人の隊長たちは、誰も会議室から退室を申し出る者はいない。聖騎士ミレイユは試練で異界へ渡る前に、憑依されていたある生還者と実際に会っている。
参謀官マルティナは、ミレイユの聖騎士の試練に立ち会った神官の中のひとりである。それまでに何人も最強の祓魔師である聖騎士に憧れ、試練に挑んだ者たちの末路を見届けてきた。

マルティナの姉エルヴィールとミレイユと会っていた。マルティナはエルヴィールが死後に怨霊として穢れとなり、ミレイユに祓われるまでの記録し、資料として残した功績から、聖騎士ミレイユの側近として、神聖教団の本拠地である古都ハユウから離れての活動を許可された。

マルティナは、聖騎士の試練の生還者である姉のエルヴィールの治療を試みていた。だが、エルヴィールの魔力を奪った怨霊が出現し、魔剣ノクティスによって祓われて消滅した。
その治療に使われた方法を応用し、9人の神聖騎士団の祓魔師の乙女たちに施すことで、蛇神のしもべの対抗手段とすることをマルティナは、聖騎士ミレイユに進言した。神聖騎士団の祓魔師の乙女たちに秘術を試みることをミレイユに告げたのである。

神聖教団には、初代教祖ヴァルハザードが残した秘術が残されている。
マルティナは9人の乙女たちの潜在する魔力を解放するために、神聖教団の門外不出の秘術を、命がけで行うという。


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