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Sorcery doll (ソーサリー・ドール)
【ファンタジー 官能小説】

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蛇神祭祀書-5


シャンリーの支配するバーデルの都は、伯爵領に囲まれている。王都トルネリカやパルタの都の方向から、ガルドの軍勢に攻め込まれたと想定したときに盾となる伯爵領の領主たちが2人いる。
リヒター伯爵、ベルツ伯爵、ブラウエル伯爵、テスティーノ伯爵、ストラウク伯爵。これらの5人の伯爵領は、パルタの都や王都トルネリカの方面ではない。

ロンダール伯爵、フェルベーク伯爵。
この2人の伯爵領は、王都トルネリカやパルタの都とバーデルの都の間に位置している。

シャンリーが女伯爵となる前の状況は、バーデルの都を領地とするバルデット伯爵がベルツ伯爵、ブラウエル伯爵に呼びかけ、リヒター伯爵をローマン王崩御後に擁立する計画を立てた。
モルガン男爵は王都名門貴族派をまとめて宮廷議会を握っていて、リヒター伯爵を国王に擁立する動きを阻止する必要から、皇子ランベールを国王に擁立した。
リヒター伯爵が国王になれば、パルタの都の小貴族たちが、伯爵領からの政策を持って宮廷官僚として議会に参加してくると予想された。小貴族たちは、伯爵家の血縁の貴族たちだからである。
ロンダール伯爵、フェルベーク伯爵は、バルデット伯爵から協力しない場合、バーデルの都の市場での貸店舗の利用の値上げと利用時間の制限、荷馬車の入場制限などの経済制裁をする考えがあることをほのめかされ、しかたなく、リヒター伯爵を擁立する建白書に連名した。

シャンリーは流通の要である大市場を握る立場を、バルデット伯爵から強奪したようなものとこの2人の伯爵たちは内心では苦々しく思っていた。
しかし、女伯爵シャンリーをバーデルの都の統治者と認めないと反対する活動を行ったり、宮廷へ上訴すれば、王命に逆らったと疑われかねない。相手はランベール王の妻妾である。ランベール王に妻妾なシャンリーが密告したら、バルデット伯爵のように投獄されたり、爵位と領土を剥奪されかねないと危惧した。
そこで、フェルベーク伯爵は女伯爵シャンリーに媚を売る方針で接することで、自分の利益を確保しようとした。パルタの都の執政官ベルマー男爵とも接触していた伯爵である。

ロンダール伯爵は「パルタ事変」以降はパルタの都の小貴族の官僚を解任して、騎士ガルドとの関係は一切ないことを主張できるような方針を取り、また女伯爵シャンリーには、以前のバルデット伯爵統治下と同じ条件で対応を請う書状を送っていた。

女伯爵シャンリーは、接触してきたフェルベーク伯爵には、バーデルの都を、全伯爵領の市場の都からターレン王国で唯一の巨大な歓楽街とする計画を、ベッドの上で教えてやった。
そして、フェルベーク伯爵と奴隷狩りの組織の設立を計画した。
フェルベーク伯爵にとってバーデルの都が利益となると判断させることで、もしも騎士ガルドがバーデルの都へ進軍してきた時には、バーデルの都を守る盾として、フェルベーク伯爵に戦わせることにしたのである。

ロンダール伯爵は妖艶な美女のシャンリーではなく、シャンリーの従者である少女エステルに惚れて、妻妾に迎えたいとシャンリーに申し出てきた。フェルベーク伯爵と連携し、奴隷狩りの組織の運営に加担することを条件として、シャンリーは、妻妾にはさせられないが、メイドのエステルとロンダール伯爵を、バーデルの都で定期的に密会させることにしたのである。

フェルベーク伯爵とロンダール伯爵の嗜好の違いはあったが、シャンリーのバーデルの都の再開発計画は急速に進められていった。

「はぁ、はぁ、エステル、かわいいよ」

ロンダール伯爵がよだれを流し、エステルの小ぶりなふくらみに、肥満した頬をすりよせて興奮している。
エステルは、壮年のロンダール伯爵の薄い頭髪を撫でながら、妖しげな微笑を浮かべていた。
ロンダール伯爵の勃起したものは、小指ほどな太さと長さしかなく、エステルの白い柔肌にふれているうちに、挿入することなく射精してしまうほどな早漏であった。
ロンダール伯爵の子孫は残っていない。エステルの肉体には避妊の法術がシャンリーによって施されていた。

エステルがロンダール伯爵と密会している時、エステルの意識はシャンリーの肉体で眠っている。エステルの肉体は、呪術によってシャンリーが操っていた。
シャンリーが自分の肉体に戻り目を覚ます。エステルは、ロンダール伯爵との情事の記憶を、眠っている間の悪夢のように感じる。

ロンダール伯爵との情事を終えたエステルを、シャンリーは慰める。またフェルベーク伯爵に抱かれたシャンリーを、エステルはベッドの上で一生懸命に奉仕をして慰めようとした。
少女エステルにとってシャンリーとの愛の交わりは、シャンリーにとっては祭祀書から得た知識によって行われている呪法の実践に過ぎなかった。

メイドの少女エステルは、書斎でシャンリーが祭祀書のページをしなやかな指先で静かにめくる小さな音や、美しい横顔をそばで見つめている夜の時間がとても好きだった。

祭祀書、儀式用のナイフ、神官の錫杖の3種の神器をシャンリーが入手できていれば、シャンリーは異界で、蛇神の妻神ラミアとなって、蛇神ラーガを慰め続けられただろうか。

「歴史には、もしもこうであったらと、後世になって考えたくなるような瞬間があるものだ。だが、歴史はそれがいつなのかを知ることが、人にはできないと教えてくれる」

学者のモンテサントは、ターレン王国の歴史書を書きながら、妻のイザベラに話しかけた。

「モンテサント、それって、いつ誰と恋をするのかわからないってこと?」
「イザベラが言った言葉のほうを書き残しておくほうが、後世の人は喜んでくれそうな気がする」
「絶対に書き残したりしないで、胸の中にしまっておいておくれ。恥ずかしいじゃないか」

イザベラは、夫のモンテサントが自分以外の女性と思いがけない恋に落ちたりしないか気になり、つい口にした言葉を、後世まで書き残されてはたまらないと思った。


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