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Sorcery doll (ソーサリー・ドール)
【ファンタジー 官能小説】

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ニアキス丘陵の獣人娘-2


「それってさぁ、逆に幽霊があたいの影響を受けることってないの?」

アルテリスがリーナに質問すると、さらに亡霊たちの動揺は大きくなった。

「初めから気が合わなくて、危害を加えるためについてくる亡霊もいます。例えば生前に大切にしてた物を壊されたり、人を傷つけられたりして恨んで苦しめるために眠れないように嫌な夢をみせてみたりします。
自分と同じような嫌な目に合わないように、誘導してみる亡霊もいます。
同情してほしくてついてくる亡霊もいますね。
もともと、気が合うからついてくるわけではないんです。
わざと亡霊が嫌がることをして、されたくなかったら、自分のかわりに危害をくわえてくるように脅して従わせる呪術師もいます。影響を受けるというか亡霊の気持ちとは関係なく利用する人もいますけど」

えっ、ちょっと、なにそれ、こわいんですけど、みたいな表情で亡霊たちが、リーナの顔を、ぎょっとした表情で一斉に見つめた。

「幽霊が嫌がることって何よ。利用する奴もいるのか……嫌だな、そういうの」

亡霊たちも一斉に、こくこくとうなずいている。

「しかし、呪術とはそういうものですから。おそらく、大がかりな呪術を行うために、村は襲われたのでしょう」

僧侶リーナは、アルテリスに話しかけながら、同時に、なぜ犯されて殺されたのがを、亡霊の女性たちに教えていた。

「このニアキス丘陵のまわりを、幽霊だらけにしようとしてやがるのはわかったよ。それって誰が得するんだ?」

アルテリスは商人気質なので、損得で物事を考える癖がある。

「誰が得するのかはわかりません。ですが、それを止めさせないといけません。だから、私は、ゼルキスに行かなければならないのです。村を襲った者たちに見つからないように」

僧侶リーナが、深いため息をついてそう言った。

「ゼルキスに行けば、それってなんとかなるのか?」
「ええ、ゼルキスには聖騎士ミレイユ様がいらっしゃいますから。亡霊を祓い、残虐な行為を行う者たちを討伐してくれると信じています」

亡霊を祓うと聞いたので、アルテリスのまわりの亡霊たちが怯えている。

「それはあんまりじゃないか、リーナ。幽霊になりたくてなったわけじゃない人たちは、殺されたあとも、消されるなんておかしくないか?」

「しかし、納得してもらうしかありません。亡霊として存在していれば、影響を及ぼすのですから」

「せめて、あたしにくっついてきた人たちだけでも見逃してもらえないか。あたしはリーナを助けたんだから、リーナも人助け、いや、幽霊を助けてやってもいいんじゃないか?」

「そうですね……このままターレンに行って、しばらく隠れていて下さい。ゼルキスは神聖教団の関係者も多いですから、教団の方針では、亡霊は人に害をなす前に祓うことになっていますから」

僧侶リーナは、ハンターのレナードの名前と容姿をアルテリスに教えた。

「そいつは、リーナの彼氏か?」

アルテリスに言われて、リーナの顔が真っ赤になった。

「いえ、その、親友というか」

奴隷商人シャンリーの媚薬の香で、体を蝕まれたレナードを見つけたのは、アルテリスだった。

ターレン王国に到着する頃までには、アルテリスにも幽霊の姿が視えるようになっていた。

5人の亡霊は、羽を持つ幼女の小人の姿にアルテリスには視えている。
アルテリスの手のひらにちょこんと乗るほどの大きさしかない。
彼女たちの話す言葉はわからないが、なんとなく簡単な意思疎通はできていた。

レナードは、逃げてきた宿場街よりも、ターレンの国境に近い宿場街の路地裏にいた。建物の壁にもたれて、座り込んで気絶していた。

レナードのまわりを薄暗い路地裏で淡い紫色の光が心配しているのか、飛び交っている。

(リーナも行き倒れになってたけど、彼氏もかよ。変なところが似てるな)

アルテリスは自分の幌馬車の中に、レナードをかくまってやった。

アルテリスは市場でレナードのために痛みを和らげられそうな薬の素材を探していて、レナードを奴隷商人が探している噂を聞いた。

レナードが奴隷商人の借金を踏み倒して逃げたので、見つけたら金を払うという話だった。

もちろん、アルテリスはそんな話を信用しない。
商人の直感が嘘の噂を見抜いた。

ハンターはダンジョンに潜ればかなり稼げる。
他人に金を借りるとしたら、初めてダンジョンに潜るときの装備などを買うときだけで、奴隷商人ではなく、武器や防具などを扱っている商人に借金をするぐらいだろう。
あと、奴隷商人が奴隷をツケで売った話も聞いたことがない。

(あたいの故郷なら、治療ができる人もいるだろうけど、今からじゃ、故郷に着くまでもたないだろうし。とにかく、こいつの体力だけは持たせないと)

「人間族の男っていうのは、本当に弱くてめんどくさい奴ばっかりだ!」

幌馬車の周辺は、5人の亡霊の小人が警戒して見張りをしてくれている。
あやしい奴が近づいてきたら、幌馬車の中のアルテリスに知らせてくれる。

「このまま死んだら許さない。死ぬなら、あたいを悦ばせてから死ね」

レナードは、目を覚ましても、ぼんやりと何も言わずに虚ろな目をしているか、痛みに苦しんでいるかのどちらか。
1日のうち、ほとんど眠り続けていた。

レナードが歩けるようにはなった頃、アルテリスはレナードが獣人に見えるように、狼の頭部の皮を使ったかぶりものをつくってやった。

「こいつはあたいの奴隷だよ。おとなしい奴だし、一緒の部屋に泊まるからいいだろ?」

安宿でアルテリスは交渉した。
アルテリスが獣人娘であったので、かぶりものだと気づかれずに、泊まることができるようになった。
首輪には鎖がつけられている。
アルテリスが、鎖を引いてレナードを誘導して連れて歩いた。


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