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Sorcery doll (ソーサリー・ドール)
【ファンタジー 官能小説】

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蛇の夜-1

南の小国ターレンの宿場街は、街道沿いに、王都トルネリカまで続いている。

国境から王都トルネリカまで続いている街道は、蛇の道とも呼ばれている。

街道沿いの宿場街には必ず娼館がある。それは街や村に酒場があるようなものと考える者が多い。
ターレン王国は、ゼルキス王国と比べると、貴族と平民の貧富の差が大きく治安が悪いので、娼婦になる者が多いからだと考える者たちも、行商人の獣人たちにはいる。

だが、ゼルキス王国がかつて呪われた地であったことを知る者、たとえば神聖騎士団の参謀官の才女マルティナは、ターレン王国も呪われた地であり、その呪いを人々が避けるために、何をしたのか知っている、

国境から王都まで、うねりながら続く一本道の石畳の街道が、地図上では、巨大な蛇の姿を模したものだとわかる。

またターレン王家の紋章が、酒杯に蛇が巻きついた姿が描かれていることも、蛇神信仰とつながりがある家系であることがうかがえる。
酒杯は富と享楽の象徴であり、それを守護する蛇が巻きついている姿が紋章となっている。

現在、蛇神への信仰は、ターレンの王や民からも忘れ去られているが、その名残が、ターレン王国には残されている。

街道沿いの宿場街と娼館もまた、蛇神信仰の名残なのだった。
王都トルネリカとなる以前は、そこに蛇神を祀る神殿があり、祭が行われる。宿場街のあった場所で巫女たちはその途中で、蛇神の信仰に身を捧げていた。
巫女にして娼婦でもあった。

蛇の夜と呼ばれる蛇神を祀る祭が行われていた。神官が美しい巫女の生贄を血を酒杯に注ぎ満月に捧げ、蛇神を崇拝する信者たちがその一夜を、熱狂と肉欲に身をゆだねるという荒々しい祭であった。蛇神を祀らなければ、呪われた地の厄災を受けると信じられていた。

ダンジョンがニアキス丘陵に作られたことで、人々は怪異への恐れや蛇神への信仰を忘れていった。
巡礼者が旅の疲れを癒す宿と巫女たちの修行場は、宿場街と娼館となった。

ターレン王国から来た神聖教団の巫女リーナが、なぜか失われた蛇神信仰の神具である蛇神の錫杖を所持している。
聖騎士ミレイユから、マルティナは話を聞いて、僧侶リーナに興味を持った。

聖騎士ミレイユの愛刀ノクティスに興味を持ち、神聖騎士団へ入隊したマルティナである。
蛇神の錫杖も、聖騎士ミレイユの愛刀のような魔導具なのではないかと推測し、胸を高鳴らせながら、ハンターギルドを訪れた。

「これは我が家に伝わる家宝で、母親から娘へ受け継ぐ御守りのようなものと聞いています。恋愛成就の御利益があるそうです」

僧侶リーナに錫杖について聞いたマルティナが、まったく予想していなかった話をされて唖然としていた。

(僧侶リーナは、蛇神信仰の神官だと思ったのに。恋愛成就の御利益って。神聖教団は、愛と豊穣の女神ラーナを信仰しているから、恋愛成就の御利益なら、持っていてもおかしくはないけど、蛇神信仰の神具が御守り?)

聡明なるゼルキスの才女、紫瞳のマルティナが、首をかしげ、僧侶リーナをじっと見つめて困惑していた。

蛇神の司祭は、巫女を蛇神への生贄として捧げる。

「シャンリー様、お許し下さい」

南の小国ターレンの宿場街、奴隷商人シャンリーの娼館の地下室。
天井から下がっている鎖と手枷で、全裸で爪先立ちに吊るされている少女が涙を流して懇願するのを聞いて、妖艶なる娼館の女主人が微笑を浮かべている。

全裸少女と、漆黒のロープ姿で目深にフードを下ろしている奴隷商人シャンリーを燭台の蝋燭の小さな灯火が照らし出している。

シャンリーの手には、刃が波打つような形状で、柄が蛇を型どった形状の銀のナイフが握られていて、蝋燭の灯火に反射している。

シャンリーの目を盗み、ふぬけにしたゼルキスの騎士団の密偵の青年を逃がそうとした少女の娼婦がいた。

トレジャーハンターのレナードが死なないように、食事を与えたり、体を拭く世話を命じておいた少女は、娼館では客からの人気があった。

「レスフィーナ。お前が逃がしてやったあの坊やは、今頃、坊やはここに戻ろうが迷ってるでしょうね」

シャンリーは、かつて神殿で蛇神の祭に使われていた香をたっぶりと焚いて、レナードを快楽に溺れさせていた。
禁断症状が出ると、皮膚が鳥肌立ち、全身の強烈な痛みと痙攣に襲われる。

「あの坊やのことが気に入ったのなら、どうして私に言わなかったのかしら。言えば、坊やを悦ばせる女をさせてやったのに」

これは嘘だった。

レナードを快楽に溺れさせる時、部屋には香の煙が立ち込めるほど焚いている。

客を取れる娼婦であり、シャンリーも美しい容姿が気に入って弄ぶことがあるレスフィーナが、香の毒にやられないように、香を焚いていない時間にレナードの世話をさせていたのだから。

「可愛いレスフィーナを、生贄になんてしたくはないのに……。とても悲しいわ」

そう言っているが、シャンリーは涙を流したりはしていない。
シャンリーの唇には艶然とした微笑が浮かんでいる。

シャンリーは怒りに我を忘れて、レスフィーナの左胸にナイフを突き立てたりはしなかった。

「ひっ!」
レスフィーナの背後にシャンリーはまわり込む。レスフィーナの背中をナイフではなく指先で撫で上げる。

「このきれいな背中が大好きだったわ」

レスフィーナの耳元で囁いてから、さっとナイフで、白い背中を小さく斜めに切りつける。
浅く切られた少女の柔肌から、血が垂れる前に、シャンリーは顔を近づけると、傷をなぞるように舐めまわした。

「ふふふっ、次は、この小さい耳を切り落とそうかしら」

レスフィーナの耳を、シャンリーは甘噛みした。レスフィーナが怯えて震える。
甘噛みをしながら、ナイフの刃ではない身の部分で、少女の胸のふくらみを、ぴたぴたと軽く叩いた。


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