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Sorcery doll (ソーサリー・ドール)
【ファンタジー 官能小説】

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女僧侶リーナ-1

北の小国ゼルキス。
王都ハーメルン。
古い石造りの街。
石畳にしても、路地裏の石造りの四角い家の壁さえも古い歴史を感じさせる。
賑やかな大通りを少し汗ばみながら、僧侶の法衣をまとった少女が、行き交う人の流れに逆らわないように歩いていく。

手には銀の錫杖をぎゅっと握りしめて、疲れきった華奢な体で歩き続けていた。

ギルドの受付嬢は、ハンターのレナードの署名と、騎士団の紋章の印を蝋の上から押されて閉じられた手紙と、運んできたひどく青ざめた少女の顔を見比べていた。

「あっ!」
受付嬢の目の前で、少女が目の前でふらついて、カウンターにもたれかかり、小声で言った。
「……騎士団長様に面会を」

ハンターギルドの控え室で、気絶して眠り込んだ少女が目覚めるのを、静かに待っているのは、金色の髪をポニーテールにすっきりと束ねた騎士団の軍服をまとった美しい容貌の乙女であった。

「よほど疲れていたのだろう」
ギルドの受付嬢の前で、しなやかな指先で、少女の栗色の髪に乙女は、そっとふれた。

「おそらく、ニアキス丘陵を国境まで突っ切ってきたのでしょう。たしかに最短距離ではありますが、途中で休める村などありませんから」
ギルドの受付嬢も乙女の隣に立ち、ベッドで眠り込んでいる少女を見つめた。

南の小国ターレンから来た華奢な少女。身なりから僧侶だとわかるが、トレジャーハンターのレナードと、どんな関係がある人物なのか。

「……ここは?」
「ハーメルンのハンターギルドです」
受付嬢のフレイヤが教えると、少女はベッドから身を起こそうした。

「騎士団長様に会わないと」
「無理はするな、まだ休んでいたほうがいい」

騎士団の軍服姿の金色の髪の乙女が、少女に声をかけた。少女はまじまじと乙女の美貌を見つめて言った。

「聖騎士ミレイユ様」
「私を聖騎士と呼ぶということは、神聖教団の僧侶のようだ。そなたが運んで来たレナードからの報告は、たしかに受け取った」

それを聞いた少女は、たちまち目から涙をポロポロとこぼした。
少女の名前は、リーナという。
顔立ちは幼さが残っているが、18歳。
ニアキス丘陵のダンジョンを探索していて、ハンターのレナードと出会った。

探索を終えてニアキス丘陵から離れて、辺境地域の小村に、レナードとリーナが立ち寄ったときに見たのは、焼き討ちされた村だった。

「私は死者の声を聞く降霊術を用いて、村人の霊から何があったのか聞き出しました。すると、南のターレンに属する村人の幽霊は、北のゼルキスの兵に、村を焼かれたと伝えてきました。北のゼルキスに属する村人の幽霊からは、南のターレンの兵に村を焼かれたと」

「野盗の仕業でしょうか?」
受付嬢フレイヤが、リーナに言うと静かに顔を横に振って深いため息をついた。
「襲撃者は100人ほどいたようで、野盗にしては大規模です。襲撃者が何を彼らが村で行ったのは、レナードが報告した通りです」
ミレイユがリーナに頷いた。

「私たちは、二人の人物の名前を聞き出しました。
奴隷商人のシャンリーと傭兵ガルド。
レナードは、奴隷商人シャンリーと接触してみると言いました。
このままですと、死霊を弔い切れず、焼き討ちされた村によって囲まれたニアキス丘陵が、結界化してしまいます。どうか助けていただけませんか?」

聖騎士ミレイユは、異界化についての知識を持っていた。
死霊の巣で囲まれることで、異界が形成されてしまう。世界から滅び去った魔族が復活する場所になってしまう。

死霊を弔うのではなく、魔族を滅する力によって消滅させる。
それは僧侶ではなく聖騎士にしかできない方法だった。

「ダンジョンが異界となればどのような厄災を招くか、さすがに予想できない。
しかし、神聖教団に知らせれば、ニアキス丘陵が結界化する前に、村を浄化できるのではないか?」

聖騎士ミレイユに言われ、リーナはそれでは間に合わないと言った。

「祈りによる村の浄化には、少なくとも一年はかかります。浄化終わった頃、ニアキス丘陵の異界化がすでに起きてしまうでしょう」
「ミレイユ様、傭兵ガルドの傭兵団を、騎士団で討伐してしまうのは?」
「フレイヤ、騎士団が国境の向こうへ進軍すれば、南のターレンに宣戦布告したと言われかねない。できることは、国境の警備兵の増員ぐらいだろう。焼き討ちされた村を、私が祓ったあと、リーナが鎮めていくしかない」

リーナの錫杖を、聖騎士ミレイユはちらりとみた。リーナの錫杖の飾りには、小さいながらも宝玉が5つ、星形に配置されて埋め込まれていた。

リーナは華奢な体つきで、優しげな童顔だが、5つの魔石の宝玉を制御して術を行うことが出来る手練れの者だと、聖騎士ミレイユは、すでに見抜いていた。

「ふふっ、傭兵100人を一人で殺したあと亡霊の後始末は、リーナに任せるとしよう。それでよいな?」
「はい。ミレイユ様、ありがとうございます!」

聖騎士ミレイユには、少し気がかりがあった。北のゼルキスに属する小村が傭兵団に襲撃されているのに、国境警備兵から、騎士団には報告が届いていない。

ゼルキス王国の宮廷議会の貴族の中に、傭兵ガルドの襲撃を容認している者がいるのではないか?

「王と謁見する。2日後の宮廷議会の王の承認で、私たちは動くことになる。それまでは、フレイヤの指示をよく聞き、体を休めておくことだ。それができないのであれば、私は協力はできない」
「フレイヤさん、すいません。お世話になります」
「いいのよ。それにしても、私の弟に、こんなかわいい彼女ができていたなんて思わなかったわよ」

フレイヤとレナードは、腹違いの姉弟。
ふたりの父親クリフトフは、若い頃はトレジャーハンターで、恋多き男なのであった。
ハンターを引退後、王都ハーメルンにハンターギルドを設立した。


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