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Sorcery doll (ソーサリー・ドール)
【ファンタジー 官能小説】

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北のゼルキス、南のターレン-1

ニアキス丘陵地帯。
北の小国ゼルキスと南の小国ターレンの国境付近に広がる丘陵地帯である。

「ニアキス丘陵地帯は、先祖伝来の我が国の領土である」
北の小国ゼルキスと南の小国ターレンを隔てているニアキス丘陵地帯に対して、両国はどちらも譲る気はないまま現在も交渉を続けている。

ニアキス丘陵地帯周辺の小村は、それぞれ北の小国ゼルキスか、南の小国ターレンに属している。

両国を渡って商売をしている行商人たちは。この数年ものあいだ、不穏な噂を囁いていた。
ゼルキスとターレンがニアキス丘陵地帯をめぐって近いうちに、戦を始めるのではないか。
そんな噂であった。

ニアキス丘陵地帯を開拓して農地にすることができれば、農作物の収穫量が増加するのは、北のゼルキスと南のターレンも同じである。
どちらが開拓のための費用を出すのか、という問題があった。

ニアキス丘陵地帯を近隣の小村の住人たちが、農地として開拓しないのには、理由があった。

ニアキス丘陵地帯のほぼ中央には、古代遺跡であるダンジョンが存在している。
そして、ダンジョンの周辺はオークという、猪の頭部を持つ獣人族が生息している。エルフ族が世界樹という巨木を守護するように、ニアキス丘陵のオーク族はダンジョンを守護するように生息しているのである。

学者によれば、ニアキス丘陵のオーク族は、一般的なオーク族とは異なり、体躯もひとまわり大きいため、オーガ族に近い、別の獣人族でではないかという説がある。

他の獣人族やエルフ族やドワーフ族のように、人間族との言語や貨幣の共通性もないこともあり、変種、または絶滅した古代種の生き残りではないかと推測されている。

オーガ族。肌は赤銅色で、髪はなく、頭部に1本から三本の突起があり、人間のおよそ3倍の体躯の獣人族は現在、ダンジョン内以外では、絶滅している古代種である。好戦的な種族で、他の種族を獲物として襲ったために害獣として駆逐されたとされている。

ニアキス丘陵のオーク族は、共通言語も通じず貨幣も使っていない。ただし、かつてのオーガ族のように、好戦的ではなく丘陵地帯から出ることがない。
つまりニアキス丘陵地帯に踏み込まず、迂回していれば関わることがない。

ダンジョン(迷宮)は古代遺跡であり、生き物のように成長する。ダンジョン内には、魔法で動く石像のゴーレムのように、大陸ですでに絶滅した種族が生成されている。これらを殺害すると、魔石というものに変化する。

この魔石は装飾品としてな価値だけでなく、ドワーフ族やエルフ族は加工の素材として使用するために、高額で取引される。魔石狙いでダンジョンに潜る者もいて、トレジャーハンターと呼ばれる。

ダンジョンに生成された生物が殺害されると、消滅するか魔石化するが、人間がダンジョン内で死ぬと、まず遺体がダンジョンに吸収される。
ダンジョンは、外界の生物の遺体を餌に成長し続ける。
衣服や武器防具など所持品は、それを餌とする生物に発見されると吸収される。
例えば粘液獣のスライムは、人間の肉体は溶かさないが衣服や装備品を吸収する習性がある。

ニアキス丘陵地帯を開拓するには、オーク族の駆逐とダンジョンの破壊と撤去が必要。そのために両国や近隣住人は、ニアキス丘陵を開拓することを、今まで避けてきたのである。

行商人たちは、トレジャーハンターから魔石を買い取る者もおり、ニアキス丘陵のオーク族を、最近あまり見かけないと聞いた。

そのために、北のゼルキスか、南のターレンがニアキス丘陵を領土にするために動くのではないかと噂になっている。

ダンジョンを残し、自国のハンターギルドに管理させて、魔石をハンターに集めさせることも可能である。
そうなると行商人たちは、商売がやりにくくなると、しきりにぼやく。
大国では魔石をギルド経由で買い取るために、ハンターから直接買い取るよりも割高になりがちてある。

戦になれば、戦が終わるまで、北のゼルキスと南のターレンを渡り歩くこともできなくなる。ニアキス丘陵のダンジョンに潜るハンターも戦に巻き込まれるのを避けて、しばらくいなくなるだろう。

ニアキス丘陵のオーク族が、周辺の地域へ移住し、人間族の村を襲っているという噂が、北の小国ゼルキスでは流れている。そのため、国境付近を渡る時に警戒するようにと、警備兵から忠告された者もいるらしい。
オークの移住と凶暴化の話は、南のターレンでは聞かない噂話である。
このあたりのことは、行商人たちの間でも、真偽がはっきりとしない。

北のゼルキス、南のターレンどちらにもハンターギルドがないおかげで、行商人たちは、どちらの国でも利益を得てきたが、もしも、ニアキス丘陵をめぐる戦が起きて、戦勝国にはギルドができるのではないかと、酒を酌み交わして話をしている。

酔った行商人たちはニアキス丘陵の利権をどちらが奪うか、賭けをする話をしていて、賭けにならんと笑い出した。

北の小国ゼルキスには王立騎士団がいるが、南のターレンには騎士団はない。
戦となれば、北のゼルキスが優勢だろうと、行商人の獣人族たちは、人間族の戦の噂話を酒の肴にして、また一杯と酒を注文した。

南のターレンの宿場街の酒場でも、ガルド傭兵団が、ニアキス丘陵地帯の周辺の小村を狙って襲撃しているという噂は聞かれていない。

南の小国ターレンでは、奴隷商人たちが娼館や酒場を運営している。北の小国ゼルキスでは、奴隷の売買は禁じられているからである。
ガルド傭兵団が噂にならないように、南の小国ターレンの奴隷商人たちは、情報操作していた。

「この手紙を騎士団長様に」
「わかりました」
南の小国ターレンの夜の酒場では、マントやロープのフードをかぶったまま、飲食して、小声で話す者も少なくない。
たとえ薄暗い酒場でも、少し離れた別のテーブルの客からはっきり顔を見られたくない。


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