玉子焼きリターンズ-2
「え…?あ、ありがとう。」
私は傘の中に一人分スペースを作ると、鷹端くんを迎え入れた。
「ところでこの犬…。さっきからずっと暖めてるのにずっと冷たいんだ…。」
「それって…もしかして…?」
「………。」
鷹端くんはうっすらと目に涙を浮かべて頷く。
「急いで。走ろ。」
大雨の中、私と鷹端くんは思いっ切り走った。傘をさしている意味は既に無く、ずぶ濡れになりながらもひたすら無言で走った。
「やっと……着いた……。早く診て貰おう。」
「う、うん」
「お帰り此華!ってこの人とこの犬は一体?まさか…彼氏!?」
家に入るなり、いきなり父からのマシンガントーク。
「ち、違っ!!…じゃなくて、この犬診てあげて!!」
父がいきなり獣医の目になり、まじまじと犬を見つめる。
「……むぅ、もう遅いぞ。残念ながら…私の腕でも亡くなったものを生きかえらすことは出来ない。」
「そんな…遅かったの…?鷹端く…!?」
「うわぁぁぁぁぁ!!!!」
犬が亡くなったのを知ると鷹端くんはいきなり叫び、泣き出した。
「また…また大事な命が亡くなった…。もう死ぬのを見るのはイヤだ!!」
「鷹端くん…。」
鷹端くんは『また』って言葉を使った。きっと過去にも自分の大事なものをなくしたのだろう。命をとても大切に考えてる鷹端くんを見て、なぜか凄く愛おしく感じた。暖かい人なんだな、って。
「鷹端くん。」
ぽふっと鷹端くんを抱きしめる。優しく。
「泣かないで?失ったものは二度と帰ってこない。諦めろとは言わないけど、一区切りつけなきゃ。それまでいっぱい泣いていいよ?」
「………ッッ…。」
一瞬驚いたように体を震わせたあと、声を噛み殺すように泣いていた。
「……よしよし…。」