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「下着を脱いできて」
【その他 官能小説】

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「下着を脱いできて」-1

セミがうるさいくらいに鳴く暑い日だった。
その日わたしは大好きな北島さんとデートなので思いっきりおしゃれをして出かけた。
ピンクのキャミソールに白いスカート白いカーディガンをはおっていた。
海浜公園でいつものように涼しげな北島さんが爽やかに手をあげてくれた。

「あのね、レポート書かなくちゃいけないの。
先日の銀行の合併について解説してくれる?」
隣に並んで歩きながらわたしはちょっと甘えて頼んだ。
「いいけど。やって欲しいことがある」
「なあに?」
「下着脱いできて」
北島さんの口からそんな言葉が出るなんてびっくりした。

北島さんと付き合い始めて半年。
身体の関係になったことはこれまで3回ある。
逢うたびいつもというわけではなかったことから大事にされているんだって自信が持てた。
少し酔ったとき、愛し合って自然な行為だと思うことができた。
だから、将来を見据えていい関係が築けていると思っている。
北島さんは頭のいい、できる男である。
尊敬できる素晴らしい人。
それなのに先ほどの言葉。
わたしは何がなんだかわからなかった。
陽射しを避けて桜の木の下のベンチに並んで座った。
「銀行の合併のこと、教えて欲しいんの」
「下着を脱いできて欲しいんだ」
北島さんは耳元でささやく。
どうやら交換条件であるようだ。
「どうしてそんなこと言うの?」
「そうして欲しいから」
北島さんの真面目そうな顔からは想像もできない言葉。
眼鏡越しの目が、訴えるようにわたしを見ている。
「そういうことしたいの?」
「そうじゃなくて、舞さんが下着をつけないで歩いているところが見てみたい」
気持ちがわからない。
わたしはどうすればいいんだろう。
レポートは今日は無理かな・・
北島さんのこと両親に紹介するつもりだったのに・・
そういうこと言う人はやっぱり何かとんでもないものを内面にひそめているのかもしれないとこれまでの信頼が崩れていくような気がした。
「いやって言ったら?」
「舞さんは言わない。やってくれるよ」
「どうしてやると思うの?」
「やってよかったって、きっと言う」
いつもの筋の通った会話ではない。
無理のあるやりとりに今日の北島さんは、仮面をかぶった他人なのではとさえ思った。

「できない」
「舞さんはできるよ」
「下着って何のことをさすの?」
「これのこと」
ベンチに座ったわたしの腰を抱き下着の線をなぞった。
わたしは顔が真っ赤になるのを感じた。
「愛があればできるよ。僕のためにして」
北島さんは顔をのぞきこんでわたしに頼む。
これを乗り越えればレポート完成だし、仕方ないやってみるか!
そう決意すると気持ちがふっと軽くなった。

公園のトイレで下着を取り小さくたたんでハンカチにくるみバッグの底に入れた。
北島さんは満面の笑顔で迎えてくれた。
「さすが舞さん、ありがとう」
そして、わたしの手をとって歩き始めた。
海浜公園は歓声をあげる家族連れや暑さに負けないカップルなどでにぎわっていた。
そんな人々の間を手をつないで歩いた。
白いスカートは膝の上2センチの長さ。
風ふくと少し舞い上がる。
頭の中は「下着をつけていないんだ」という意識でいっぱいでまるで足取りがおぼつかない。
酔っているように北島さんの手を強く握っていた。
北島さんはちらりちらりとわたしの顔を見ながら銀行の合併について詳しく解説してくれた。
ぼーっとした頭で一生懸命聞き取ろうとし歩こうとした。
意識して強く閉じた脚の間に汗がつーっと流れるのを感じた。


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