権利-7
風花はゾッとした。
あのへの字≠ノ曲がった部分に付いているカラビナが、この手枷に連結されたとしたなら、あの両端の枷は……。
片足どころか両脚を吊られた状況が頭の中に浮かんだ風花は、この強烈な抱擁からの脱出に全力で挑んだ。
(来ないでッ!お願い来ないでえッ!)
その拘束棒を持った鈴木が近づいてくると、風花の抵抗はより激しくなっていき、そして怒声は悲鳴へと変わっていった。
もはや焦りしかない風花は、背後の男の脛を目掛けて後ろに蹴る。
だが、軽過ぎる身体は男に良い様に振られ、その苦し紛れの蹴りは当たらない。
『暴れたら危ないよお?ねえ、男四人に敵うワケないって』
「はッ離してッ!!ああッ!?ダメえぇッ!!」
『好い声だあ……クククッ!好きなだけ叫んでイイぜえ?』
伊藤と吉田は風花の脚をそれぞれに抱え、鈴木は拘束棒の両端にある枷に足首を握らせた。
大開脚にされた風花は半狂乱になって叫び声をあげるが、それこそが男共の聞きたかった声だ。
『腕を前に回せえ……細くて綺麗な……クククッ』
「ヤメてえッ!!こんなモノに私をッッ…!?いッ…イヤああッ!!!」
冷たく輝く拘束棒に、風花は四肢を吊られてしまった。
開かされた両腿の角度は直角を超えるほどであり、自重にさえ抗えぬ両腕は真っ直ぐに伸びきってしまっていた。
可愛らしい黄色のパンティに包まれた白くて丸い尻を尖端とした無様な矢印≠ヘ、ブラブラと身体を揺られながらベッドへ乗せられた。
ベッドの上部にはバーベルを乗せるような鉄製の突起が伸びており、そこに手脚の拘束棒が乗せられ、そして麻縄をグルグルと巻きつけられて固縛されてしまった。
「外しッッ!?はずッ…イヤッ!!こッこんなの…ッ!!」
拘束ベッドは彩花の方を向いている。
彩花と風花の絆≠ェ感じられるならば当たり前の配置だ。
『あ〜あ、風花ちゃんのせいで縄が脚に食い込んで鬱血しちゃってるよお。可哀想になあ』
彩花は元の高さに両手を吊られ、そして右脚を吊っていた麻縄が解かれた。
縄目の跡も痛々しい右脚は奇妙な痙攣を見せ、それは次第に収まっていった。
(身体がッ….さ、下がってッッッ…!?)
自分への凌辱が彩花の視界の真ん前に置かれた事に、風花は焦りを隠せないでいた。
必死に足掻くたびに、身体は傾斜したベッドからズリ下がっていく。
両腕は万歳≠フ形にピンと伸びきり、足の裏は天井を向いて仰いでいる。
裏筋の峰が浮き出るほどの開脚は「恥ずかしい」という言葉を超越するもので、この屈辱的な体位から逃れようとする身体は、しかしながら尻を持ち上げて股間を迫り出すという恥辱の動きにしかならなかった。
『……ん〜?なんだよこのモッコリしたコレ≠ヘよお?しかも…クククッ!?毛がはみ出てんじゃねえか、ああ?』
「みッ…み、見なッッッ……見ないでえッ!!!」
鈴木は風花の股間の直ぐ側にしゃがみ、黄色い薄布に包まれた大きめな膨らみを凝視した。
それはあの川上愛の股間を思い出させるほどに盛り上がっており、しかも真っ黒な楕円形が股布の全体に及ぶまでに透けて見えている。
それが何であるかは一目瞭然であり、それを自ら証明するように縮れ毛がパラパラと足ぐりから飛び出ていた。
『クククッ!なあ風花ちゃんよお、俺らにも《知る権利》ってのは有るよなあ?このパンティに隠れてるオマンコの色とか形……』
「ヤメてえぇぇえッッッ!!!や、やめてよホントに…ッ!あ、貴方達なんかのふざけた権利なんて認めないわよッ!!」
『ふざけてるのはどっちだよ?〈知る権利〉だの〈報道の自由〉だの、テメェらの都合だけのモンじゃねえだろ?なあ、《権利》ってのは皆んな平等にあるモンだろうが』
『〈見る権利〉に〈弄る権利〉に〈撮る権利〉……当然〈売る権利〉も〈買う権利〉もあるワケだ。こりゃあ誰にも文句を言われる筋合いは無えぜえ?』
大開脚の格好で磔にされる風花に、男共が群がった。
この空間にある権利≠ニは、権力を持った者だけに与えられた《力》である。
喋る事しか出来ない無力な風花には、権利などあろうはずはない。
『まあ、先ずはお客様に古芝風花って記者がどんな仕事をしていたか知ってもらおうか……オマエらが直ぐに振り翳す《知る権利》……お客様にも有るんだからなあ〜』
鈴木は風花が使っていたボイスレコーダーを取り出すと、スイッチを入れた。
それは今朝、由芽のアパートの近くで聞き込みした成果である。
{夜の九時ごろだったかな?あそこで青白いライトがピカッと光ったら、そこに女の人が照らされて浮かんで……なんか気味悪かったなあ。警察?言ってないよ。変に付き纏われたらメンドいし}
{そこの十字路でなんか騒いでたんだよね。五人くらいだったかな?白い箱の営業車みたいな車が来たら急に静かになってさ。どうせ若いヤツらがバカ騒ぎしてただけでしょ?}