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お江戸のお色気話
【その他 官能小説】

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お江戸のお色気話、その11-1

江戸の裏長屋の夜は深々と更けていった。
今までに、それぞれの男達が持ち寄ったお色気話に花を咲かせていた。
男も女も、凄い色気の話しに圧倒されていた。

そろそろ、そんな話が尽き掛けてきたとき、
この長屋の長老がおもむろに煙管をポンと叩いた。


「いやいや、皆の衆のはなしは、とても面白く聞かせて貰いましたよ。
それで、そろそろこの老人の拙いお色気話でも少しお話しをしようかのう」

そういうと、老人はニヤリとした顔をして皆を見つめた。
それを見た風呂屋の番台にいつも座っているお玉が言った。

「そうですねえ、色々と凄い話を聞かせていただき、
女の私でもなんか感じてきちゃいましたよ、
でしたらここらでご隠居のお話を聞かけていただきたいわ、ねえ、お峰さん」

「そうね、ご隠居さんなら、若い頃からの経験がおありの様だし、聞いてみたいわ」
お玉とは気が会うお峰という女は相づちをうった。

「お、俺もそう思うよ、この辺で、ご隠居の話を聞きたいよな、なあ皆んな」
「そうだ、そうだ!」

それを聞いていた老人は、その気をよくしてきたようである。

「では、わしの知っている限りで喋らしてもらおうかのう」
「よう、大将、待ってました!」
「おいおい、わしは大将かい」
そう老人が頭を掻くと皆がどっと笑った。

いよいよ、気をよくした老人の話が始まったようである。

「では、まずは、お江戸の女子の身体のことについて話そうとしよう」
「お、女子の話ですかい、ご隠居……」
「そうだよ、お前も好きだろう、左官屋の佐太郎さんや」

「へえ、そりゃ好きですよ、男ならねえ」
と佐太郎が言うと、(そうだそうだと)男衆は盛り上がった。
「では、ご隠居、お願いしやす!」
「そうか……えへん」

そう言って老人は一つ咳をして、皆をジロリと見つめながら話し始めた。

「さてと、江戸の頃には、人々の寿命はあまり長くはなかった。
いわゆる短命だった。精々に三十くらいから四十歳ぐらいといわれている。
その為に初体験、いわゆる男と女が性的な経験をする年頃は早いのじゃな。
故に女子は初潮がくれば結婚できるとまで言われておる。

なので十五、十六歳ころには結婚していたのじゃよ。
それ故に女はその生涯に普通には、五、六人の子供は産んでいる。
しかし、育つのは僅かだが……」

「へえ、そうなんですか、ご隠居」

「うむ、その頃にはな、女子に比べて圧倒的に男子が多かった。
だから、見立ての良い女子がいれば、男衆はそんな娘を狙っていたんだよ」

「なるほど、それで夜這いが流行っていたと聞いていましたが……」
老人の話を聞いていた左官屋の三太郎は呟いていた。

「なんだ、三太郎、お前は意外と物知りだな」
と三太郎の隣に座っていた誰かが言うと、どっと笑い声が起こった。
老人は笑いながらその男に言った。

「三太郎、お前もその経験でもしたのかな?」
「そうなんです。実はあっしの女房のお亀は、そのときものにした女なんですよ」
「そうか、お前の女房がね、後で、お前の武勇談でも聞かせてくれないか」
「へえ、では後ほどでも……」



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