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彼の手の中
【学園物 恋愛小説】

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彼の手の中<第一話>-2

「行かないの」
語尾が裏返らないよう、細心の注意をはらって声をかけた。
放課後、幸運にも宮川は一人で日誌を付けていた。私たちの他には、食べっている生徒が数人いるくらいだ。
宮川とは事務的な話題以外でまともに話したことがない。こんな風に至近距離で目が合うのも久しぶりだ。高鳴る鼓動がうるさい。
「行く必要ないよ。…よし、できた」
宮川はそう言い、教卓へ日誌を置きに行く。
「早瀬さん、チャリ?歩き?」
「…駅まで歩き」
「じゃ、一緒に帰ろうか」
「は?」
「あ、用事とかある?」
筆箱を片付けながら、私に尋ねる。宮川と二人っきりで帰る…突然降り懸かった幸福に、対処の仕方がわからない。
い、言わなきゃ。一緒に帰ろうって。帰りたいって。早く。言え、私。
「行こ」
やっと出てきたのは、そんなぶっきらぼうな言葉。しかも、足が勝手に進んで行く。
「待って、置いてかないで」
横に並んだ宮川から甘い香りが漂い、眩暈が襲った。朦朧とした意識の中、とりあえず転ばぬように気をつけた。


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