『洋蘭に魅せられたM犬の俺』-16
「ああ、嫌っ。へ、変な気分になっちゃうっ」
カズーにとっては、俺は未だ味見を終えていない征服前の処女犬なのだ。
「うふっ。カズーはおまえと早く姦りたがってんのよ」
カズーがウウウッと唸って、俺の玉袋や肉茎に噛みつかんばかりだ。
メス犬には睾丸も肉茎も不要だと言いたいらしい。
「チンポに噛みつくのだけは……勘弁してっ」
俺は情けない声をあげてメイドに泣いてすがった。
「あたしに言ったって無駄よ。おまえがカズーに言い聞かせなくちゃ」
「だって、カズーはわたしの言うことなんか、ちっとも聞いてくれないわ」
カズーが本気になれば、俺は本当に姦られるのかも知れない。
黒人並みの黒光りするデカい陰茎が本当に恐ろしい。カズーは精力絶倫だ。
俺は震えあがって、カズーから肉尻を振って逃げまどった。
「うふ、おまえがカズーに姦られる姿は見せ物として面白いから、みんなが期待して見てるのよ」
屋敷に勤務しているメイドたちやコック、庭師、運転手などが仕事の合間にガラス張りの牢獄を好奇の目で覗きこんでくる。
みんなは俺がカズーに犯されるのを期待しているということらしい。
カズーが傍にいる間中ずっと自分が交尾を迫られているメス犬であるという意識から抜け出せない。どうやらこのことが一緒に牢獄に放り込まれている一番の理由のようだ。
俺の正体が卑しいメス犬であることは自分でも疑いようがなかった。
従業員たちのなかで特に、五十がらみの庭師の源さんは女体化していく俺に興味があるらしく、日焼けした真っ黒い顏をほころばせてガラスに貼りついていることが多かった。
「13号さんよお……おまえの膨らんだオッパイを揉ませろよ。もっと敏感なデカいオッパイにしてやるぜ」
庭師の源さんは男色の気があるのか、股間を大きく膨らませてからかってきた。
俺はどれほど女体化しても、源さんやカズーに犯されることだけは嫌だった。麗様に弄んで頂くための身体の改造のはずだ。
「冗談じゃないわ……わたしは麗様だけのものなのっ」
俺はメイドの細い脚の陰に身を隠すようにして言った。
「へっへっへ。可愛い声がたまんねぇな」
虫酸が走るような嫌な男だ。カズーと同じ部類だ。
俺はキッときつい目をして睨みつけたが、丸裸で犬のように這った情けない姿では迫力ゼロだ。丸坊主だが、顏付きまでどことなく女性化してきている。
源さんは下卑た笑みを浮かべたまま、手首から太い腕の付け根にかけて彫られている刺青を見せつけるように作業衣の袖を大きく捲り上げた。
全身にわたって見事な刺青を彫り込んでいるに違いない。
(まあ……なんて綺麗なのっ)
刺青を入れる痛みに耐える男らしさを誇示したいのか、あるいは俺が刺青に興味があるのを知っているのか、昇り竜と鯉の滝登りの派手な絵柄を見せつけた。
過去に華やかな薔薇と般若の刺青を全身に入れた女を俺は抱いたことがあった。その艶やかで妖美な刺青に魅せられた記憶は未だ生々しい。
俺も墨を入れてみたいと思ったことがあったが、行動に移す勇気が無かった。
今なら、麗様に捧げる身に一生消えることの無い刺青を彫られても、なんら抵抗感は無い。
すでに鋼鉄製の首環が一生外れない南京錠で留められている。
むしろ『麗様命』と男根に入れていた門番や全身に彫りものを入れている源さんのことが羨ましいくらいだ。
「あら、おまえもメス犬になった肌に何か刺青を入れて欲しいようね」
メイドは源さんの刺青にうっとりとして見惚れている俺に囁いた。
このメイドは麗様に隷属する証として、淫唇にピアスリングを常に付けている。
「ああっ。麗様がお許し下さるのなら、麗様に飼われているメス犬の刻印を刺青で入れて頂きたいです」
俺は真顔で訴えた。
「わかったわ……おまえの望みを、麗様にも伝えておいてあげるわ」
メイドは俺の右肩から注射針を抜きながら、親切そうに言ってくれた。