家庭教師 咲希 -授業を始めるその前に-(2022/12/09)-1
「あら、咲希先生。
今日は随分とお早いですね。」
予定よりかなり早く到着した咲希に、
麻美が話しかけた。
咲希は28歳。
思うところがあって勤めていた会社を辞め、
今は大学院に通っている。
週に2回、麻美の息子・浩一の家庭教師をしていた。
浩一は中学3年生で、1学期の期末テストが間近に
迫ってきている。
「予定がキャンセルになってしまって・・・。
浩一くんはテスト前なので、
早く来てしまいました。
浩一くん、いますか?」
「いつも熱心にご指導いただいて、
ありがとうございます。
浩一はさっき帰って来ました。
自分の部屋で勉強しているはずです。」
「分かりました。
上がっていいですか?」
「ええ、もちろんです。
私は用事があって出かけます。
帰りは遅くなってしまうので、
咲希先生、よろしくお願いします。」
「はい。
承知しました。」
咲希は麻美との挨拶を済ませると、
浩一の部屋がある2階へ向かった。
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