エロス短歌倶楽部の実態-4
それを受けて、雅美は軽く会釈をした。
主催者の美しい雅美がそういうと大きな拍手が起こった。
雅美は長い髪の毛を肩まで垂らし、ブラウン系の艶のある髪型をしていた。
着ている服も落ち着いた中に、アクセントをつけた大人を演出している。
胸の前を大きく開けて、少し乳房が見えそうな出立だった。
やはり、参加した女性達の中では、ひときわ目立っていた。
そんな雅美を見つめる女性達は、ライバル意識が芽生えていた。
「では、わたくしから自己紹介を……わたしは綾川雅美と申します。
この短歌倶楽部を立ち上げましたのは、わたくしの短歌に対する思いです。
なぜに『エロス』というテーマを選んだかと言いますと、
普通に見かけます短歌におきましては、景色、風景等の情景を表現したり、
そういうものをみた感想、さらには生活の中での感じたこと等、
それぞれでしょう。
その中で最近では男女の情愛を詠んだ、与謝野晶子のように女の情念のような
熱い作品が少ないように思います。
ですので、わたくしはそれにチャレンジをしたいのです」
こうして、雅美は一気に、その思いを吐露した。
しかし、それが終わりではなかった、雅美の言葉は続く。
「ですので、そういう思いをお持ちの方々に、お声を掛けさせて頂きました。
エロスと言うテーマですが、この際に皆さまが経験された性的なこと、
或いは、その願望等、それぞれに思いは異なると思いますが、
それを短歌という形ですが、それを素直な気持ちで発表して欲しいのです。
その内容によってはご自分の性やセックスに対する思いも
暴露されるかもしれません。しかし、そういう内面を吐露していただければ、
自ずから一体感がうまれ、そこに男女の壁が無くなるとわたくしは信じています。
すみません、長くなってしまいました、ごめんなさい。
それぞれ皆様、全員に自己紹介をしていただきますが、
まずどなたかいらっしゃいますか?」
雅美は熱くなりながら、素直に自分の思いを告白していた。
なぜか、身体の中から燃えるような何かを感じていた。
すると、どこからか拍手が湧き上がってきた。
雅美の熱のある挨拶に圧倒されて、すぐに手をあげる者はいなかったが、
しばらくして、その中で男性が手を挙げた。
「はい、では僭越ながら私が自己紹介をいたします。
先程の会長さんの説明に感銘を受けました。ご立派な会長さんの後では、
なかなか手を挙げる方はいらっしゃらないと思いましたので、
この老いぼれが先陣を切りましょう、この歌会を開催する前に提案があります」
そして彼は雅美を見つめ、そしてジロリと周りを見渡していた。
実は雅美自身が今回、募集した人物をあまりよくは知らなかった。
或る人物に任せたからである、雅美が知っている人物はたかが知れている。
その人選が思いもよらないことになることも……。
「私は名前を鷹森庸三と言います。今回、エロス短歌倶楽部に入会させて頂きました。
しかし、ここは普通の歌会と違いますよね。
『エロス』という名前をつける以上、それなりのインパクトが必要だと思います。
ここには会長さんを含めて男女とも同数で、5人ずつ参加されています。
そこでどうでしょう、もちろん賛同が必要ですが会員同士で性的な関係を持つ、
という提案はどうでしょうか?」