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エロス・短歌倶楽部
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短歌というもの-4

それで、雅美は以前に付き合っていた男の紹介で、
或るビルの2階にある部屋を借りることが出来た。
その賃料は会員の会費と自分の資金で支払うことにした。
金に困っているわけではないが、
会費を払うことで会員との一帯間を感じてもらいたいからだった。

エロスという名のついた短歌倶楽部なので、
通常の方法では会員が集まらないとはわかっていた。
そこで、雅美が親しくしている友人や、
もと付き合っていた男などを利用して募集をかけていた。

短歌と言うと、どちらかと言うとある程度の年配者となり、
その短歌倶楽部のテーマが(エロス)となれば、
誰でもが入ってくるようなものでもない。
しばらくは入会する人は集まらなかった。

エロ短歌はインターネット等ではある程度は散見することがあるが、
実際に対面し自分をさらけ出すとなると勇気がいるのかもしれない。
雅美が諦めかけてきた時、朗報が入ってきた。

それは、或る銀行の支店長の妻の(緒上美智子)という女性からの電話だった。
「もしもし、綾川さんですか?」
「はい、綾川ですが……」
「あの、実は短歌のことですが、よろしいでしょうか?」
「はい、もちろんです、どのようなことでしょう」
「このエロスという名前が気になったのですが」
「はい、そうですよね」

その声の主は上品な声の女性のようだった。
雅美は嬉しかった、この短歌倶楽部に、このまま誰も参加しないと思ったからだ。

「実は、お恥ずかしいのですが、エロスという名前に惹かれてしまいました」
「ええ、それが目的になりますので、あの……失礼ですが」
「はい……」
「短歌のご経験は?」
「大したことはありませんが、少々」
「失礼ですが、お名前をお願いできますか?」
「あっ、失礼致しました、緒上美智子と申します」
「ありがとうございます、緒上さん、ではこの倶楽部の趣旨を申し上げます」
「はい、よろしくお願いします」



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