黒猫-4
それは俺の触っていたところからでした。
もう一度足の裏から上がろうとするのに、そこからこぼれてしまいます。
≪まずいぞ。これは事故なんだ。おれのせいじゃない。さわったせいじゃない≫ 慌ててマイの股に手のひらを当てて穴をふさぎます。 ≪どうか落ちないで≫ 祈ります。
光は少しためらったあと、今度は上に登って頭まで抜けてくれました。
≪よかった≫ どうなる事かと思いました。何かあってはとしばらく押さえておきます。
やがて光は吸収され、マイの息が普通の寝息に変わりました。
「これで儀式のほとんどはおしまいよ。後は頼むわ」疲れた声とともに電話が切れます。
俺もマイから濡れた手を離しました。
蜜の絡みついた手が、温かい足の間の溝へ戻りたがります。
≪今はだめだ。せっかくここまでにこぎつけたんだ≫ いくらなんでも、この後レイに失敗しましたとは言えません。
俺は指をくわえて我慢します。マイの香りと味です。
≪諦めるんだ。儀式を終わらせるんだ。その後なら‥≫
「さあ、神への献上の踊りだよ」
マイの腰をゆらせて、踊りに誘います。
マイはそれに合わせて踊り始めました。
やがて俺を抱きしめてきます。
おれもマイの腰を抱いていましたが、だんだん手が下がっていって、張りのあるお尻のふくらみを片方ずつ持ち上げるようにつかんでしまいます。
マイは乳房を俺の胸に擦り付けて息を荒くしています。
乳首が俺の胸をくすぐります。
「これはだめだ」 これは黒魔術のミサではありません。体を汚すことをしてはいけません。
とはいえ、ここまでは許されたのか、何が違うのか、もう俺にはわかりませんでした。
≪この女としたい。入れてやりたい≫ 俺のひざが折れ曲がります。
踊り続ける女の前にひざまずくと、目の前の産毛に顔を擦り付けました。
大事なのは体の穢れなのでしょうか。
生きて動いていれば誰もが汚れていきます。
身を清めるということは、それによって心を清めることです。
≪俺の心は汚れてるんだろうか。愛の行為は穢れなのか。神の定めた行為がなぜ穢れなんだ≫ 詭弁だと思います。こんな言い訳こそが汚れている証拠でしょう。
では、それを悔いている心はどうなのでしょう。 ≪悪魔は天使に戻れないのですか≫ 天を仰ぎます。
女は舞い始めました。
踊りではありません。
下半身を支えられながらも、腰を振り、神へささげる舞を献上しています。
俺は倒れそうになるマイの体を、腰に手を巻き付けて支えます。
≪汚すな≫
尻から足の間に入れてしまおうとする手を、腕にかみついて止めます。
下腹部から、さらに奥を見ようとする目をそむけます。
≪これは俺が試されているんだ。この子を魔女にしたいのか、悪魔にしたいのか、俺の責任なんだ≫ 心が痛くて、何度も叫びそうになるのを、歯をくいしばって耐えます。
呼吸が早すぎて気持ち悪くなります。
≪ゆっくりだ。吸って、吸って、はいて‥ 息を整えろ≫
さっきの光も、この子ひとりでは天まで上がっていくことができませんでした。
この献上の舞いも、二人のものです。
見上げるその姿は女神のようでした。
そして俺は足元にひれ伏すガーゴイルです。
≪この子と俺は、二人で一つの魔女を作り上げて行けということなのですか≫ 神に伺います。
この女神はすすり泣くような声を上げて、下腹を俺の顔に押し付けてきます。そして震えます。
≪吸って、吸って、はいて‥ ≫