覚醒、欲しがる未亡人 本間佳織G-2
「ーーあたしの声、聞きたかったの?」
理央はコクコク、と頷いた。
「そもそも、隼人が言ってたの聞こえたけど、あんなに余裕ないなんて、僕、目の前でヤッてて見たことない。だって、僕らそんな強引なことしなくても女の子着いてくるんだもん」
眉毛を八の字にさせて、理央が困惑した表情を浮かべる。
確かにそうだ。
研修会のときだって、隼人が本社に異動になったときだって、彼らは近場の女の子と関係を結ぶことを嫌がっていたのだ。
セックスの誘いなどせずとも、いくらでも女の子たちは着いてくるだろう。
「すごい気持ちよさそうな声出してて…すごくエロかった…。聞きたいって思って止めなかったのに……でもやっぱり僕、本間さんが他の人としてるところを見たり聞いたりするのは嫌だ。そんなこと、隼人としてて思ったことなかったのに」
佳織は理央に抱き寄せられる。理央は、まるで子供みたいに震えていた。
隼人を止めたいと思ったのに、止められなかったこと。
でも一方で声を聞きたかったこと。
だが、声を聞いてしまったら……他の男性との行為を見聞きすることに嫉妬してしまったこと。
様々な感情が理央の中で綯い交ぜになってしまっていた。
「実は……すごくわかる。その気持ち」
ぽんぽん、と佳織は理央の背中を叩きながら言った。
「え…?」
理央は佳織の腕の中で、顔を上げる。
「あたしの彼は……あたしと付き合う前から…今でも、してると思うんだけど。セックスフレンドがいるの。あたし、その人に頼んだんだ。彼としてるところを見せて欲しいって。
見たら興奮するかなって思ったんだけど、実際には、そんな気持ちよりももっと嫉妬の方が勝っちゃって。そりゃ…そうだよね。あたしと体を重ねる前から何度もしてて、それなりに信頼関係だってあって。そこには勝てないんだなぁって思わざるを得なかった。
でも……あたしと、彼の関係はちょっと歪なの。多分、彼の女性関係だけじゃなくて、あたしが佐藤くんとか武島くんとしなければ、成立しなかったと思うんだよね」
「何で…?好き同士だったんでしょ?」
「ふふ……それがね、なんと、岳の同級生だったから。あたしが一線だけは超えないようにって必死だったんだと思う。だから夫への不義理を理由にして、ずっと拒んでたの。前にも言ったけど佐藤くんと武島くんとのことがなければ、あたしはその彼と、セックスなんかできなかったんじゃないかな」
「ふーん……僕らが、覚醒させちゃったんだ、本間さんのこと。それにやっぱり…若い男から見てめちゃくちゃ魅力的なんじゃん、本間さん」
「…きゃっ」
理央は、そのまま佳織をソファーへと押し倒した。
くりくりとした目で、佳織の切れ長の目をじっと見つめる。
隼人の、獲物を品定めするような鋭い目付きとは異なる、まるで子犬のような理央の目付き。
とはいえ初めて佳織が二人とセックスしたときを思い返せば、セックスそのものは隼人の方が丁寧かつ冷静で、その一方、理央はペニスも大きく、隼人に比べれば女性を責めたいタイプだろう。
どちらか片方ではなく、二人が女性とセックスをすることで、バランスを取っているのだということがよくわかる。
「本間さんが僕らのおかげで、その彼とエッチできてるっていうなら……僕はとことんいじめてあげないとなぁ」
「も…う、さっきまでの子供みたいな佐藤くんはどこ行っちゃったのよ、切り替え早いんだから……」