乙女祭-2
「じゃあ前座はこれぐらいにして、一人ひとりをしっかり見てもらうことにします。その前にファイナリストのみなさんは、こちらに必要事項を記入してください」
そういって昭代は葉書ぐらいの大きさのカードと、ボールペンを5人に配る。
カードには身長とスリーサイズ、そしてブラジャーのカップサイズを記入する欄があった。最初からエントリー用紙に記入させたりすると怪しまれそうだから、今頃になって書かせようというのだろう。
平素ならこんなものを書いて出させることはハラスメントだろうが、この状況では拒みようがない。美景も仕方なく自分の数値と名前を書き入れ、昭代に手渡した。
カードの回収が終わると、昭代は次なる指示を出す。
「では出場者の女の子に、1人ずつ真ん中に出てもらいます。生徒審査員のみなさんはそれぞれの魅力を存分に堪能して、誰がいちばんミス和天高に相応しいか判定してください」
男子生徒たちが頷くのを確認して、昭代はまず早織の方を向いて告げる。
「それではまず、1年A組・森中早織さん」
この期に及んで拒みようもない早織は、おずおずと中央に向かって歩き、男子たちに向かって立つ。
同時に審査員の男子たちは、いよいよ興味津々の様子で、彼女の下着姿を注視した。
顔立ちは中学2年生ぐらいに見える愛くるしい童顔で、ショートボブの髪型がその印象を増している。目はくりくりと小動物的な可愛らしさが感じられ、背も平均よりは低めだ。
その一方で1年生にしてはずいぶん大人びた、グラマラスなからだつきだった。胸はかなり豊かで、見るからにやわらかそうだ。下半身もかなり発達している。そのギャップも魅力というところかもしれない。
早織は思わずそれぞれの手を胸と下腹部にやった。これまでとは違って、あまたの視線が彼女ひとりのからだに集中するのだから、恥ずかしさはいや増すのも当然だ。
出場者中で最年少らしいピュアそうな恥じらいも、見る人には魅力の一つとして映ったに違いない。からだつきは大人っぽくても、中身は顔立ちそのものの純真な少女なのだろう。
「隠すのは禁止です」
昭代に注意され、早織は仕方なく手をどけた。
早織としては、コンテストで勝つとか、ミス和天高校の栄誉を手にするとか、もうそんなことは考えられなかった。ただこの辱めが早く終わって欲しい。それだけを願って、自分の時間が過ぎ去るのを待ち続けた。前のような自分の可愛さをアピールするようなパフォーマンスも、何一つできはしなかった。
「身長155cm、B85W58H84、Eカップ」
おしまいにさっきカードに記入したボディスペックの内容をみんなに聞こえるように昭代に読み上げられ、早織はあらためて顔を赤らめた。数値を聞いた男子たちは、なるほどという表情で頷いた様子だ。
「では、次です」
昭代がそう告げると、それだけで早織は安堵の息をつき、部屋の端の方に移ると控えの面々に交じった。
「2年C組・山西梨佳さん」
入れ替わりに梨佳が、中央に向かって歩いていく。と、それだけで、「梨佳ちゃーん!」と声援を送る男子がいた。熱烈な彼女推しの1人に違いない。
多くの男子からアイドル的な人気を誇っており、動画投稿もたびたびしている彼女は、それなりに視線慣れしているのだろう。先の早織よりはずっと堂々としていた。露出度はビキニと同じなのだからと割り切ったかのように、下着姿でもいろいろなポーズを取って、自分の可愛さをアピールする。彼女はあくまで、このコンテストで勝つつもりなのだ。
当然のように男子たちの視線は彼女の胸元に集まる。ピンクのブラに包まれた乳房は大きくはないが谷間ははっきりしており、しっかりと女の子らしさを主張していた。
続いて梨佳はやや斜めに背を向け、後姿を見せた。その動きとともに揺れる長いポニーテールが注目を引くが、そこから視線を下げていくと、小柄な割には意外とボリュームがあるお尻がある。形も良く、いやらしい印象を与えない程度のセクシーさも感じさせた。
そちらの魅力も少なからぬ梨佳推しの男子たちにはしっかり認知されていた。名字の「山西」の最後の一字と繋げた「尻佳」という異名もすでに流通しているほどだ。もっとも、彼女の品を落とすものとしてこの呼び方を使うと激怒するファンもいて、殴りかかったことすらあるらしい。その事情は同担の間でも混迷を極めていた。
「身長152cm、B79W57H82、Cカップ」
最後に彼女のボディスペックが読み上げられると、先に声援を送った男はなおさら目を輝かせた。