念願の戴・処女-3
恭子はどうしても伝えたかった事がある。それは修の最後の試合の事だった。傷心を蒸し返すようで躊躇ったが、やはりどうしても伝えたかった。
「高梨くん…?」
「えっ?」
どんな会話をしようか焦っていた修は少しビビってしまった。
「あのね、高梨くんの野球の決勝戦、私ね、高高梨くんを応援できて本当に良かったと思ってるの。ありがとう。」
「あ…いや…」
こっちがありがとうと言うなら分かるが、恭子に言われつつ戸惑った。
「ありがとうを言うのはこっちだよ。」
「ううん?私ね、感謝してるの。ずっと心の中で言ってた。頑張れ、頑張れって。まるで自分も一緒に戦ってるみたいな感覚だった。勝ちたい、勝ちたいって。そんな夢中になれるぐらいの気持ちになれたのが嬉しかった。私にとって初めての事…、好きな男子を応援するって…。」
「え…!?」
恭子が伝えたかった事は、自分が修を好きだと言う事だった。その言葉に反応した修に恭子は顔から火が出るぐらい恥ずかしくなる。
「今瀬…、俺の事、好きでいてくれてるの?」
恭子は赤面して頷く。
「うん…。」
そんな恭子を見て胸がドキドキする。
「ありがとう今瀬。嬉しい。あの…、俺もね、今瀬の事、好きだったんだ…。一年の時から…」
「えっ!?ホ、ホント!?」
驚いた顔で見つめられ、修も恥ずかしくなる。
「う、うん…。入学式の日、クラスに言って初めて今瀬を見た時から気になってた。で、今瀬を知る度に好きになってた。」
「そ、そんな前から…?」
「うん。」
頭をかき照れてしまう。
「一年の時、クラスメイトだったからいつも今瀬が同じクラスにいて、見れるだけで嬉しかったけど、進級して別のクラスになって淋しかった。教室を見渡しても今瀬はいない。何か転校しちゃったんじゃないかと思うぐらい遠くに感じた。でも廊下で今瀬の姿を見るたびに安心して、密かに色んな今瀬を見てた。」
「ホント…?」
「うん。やっぱ好きだって、いつも思ってた。」
「…嬉しい…。」
はなかんだ表情にキュン死しそうだった。前の人生でも両思いだったが、キスどころか付き合う前に終わってしまった淡い恋。今度はしっかりと始まる事が出来そうで嬉しかった。
「今瀬、好きだよ。」
お互い笑みが消え真剣な表情になる。
「私も高梨くんの事が好き…。」
雰囲気がお互いの唇を引き寄せる。どちらからともなく距離を縮めた2人は上半身を向き合わせ、修の手が恭子の肩にそっと添えられた。