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こいびとは小学2年生
【ロリ 官能小説】

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キス-2


 自分でもちょっとビビるくらい恐い声が出た。おととい諭したことを聞いてくれていない怒り、いや、正確に言えば、俺の思いどおりにしのちゃんが動いてくれなかったいら立ちが、そのまま声に表れている。
 しのちゃんの表情から笑顔が消えた。

「……うん、わかってる、ごめんなさい。お兄ちゃんに言われたこと守らなくて」

 ちょっとうつむき加減になって、しのちゃんは続けた。

「でもあたし、二時まで待つのやだったの……ママ、てんちょーさん?が風邪引いたって電話があって、ほんとならお昼まではお家にいるんだけど朝からお仕事行っちゃったんだ。ご飯食べてたら、早くお兄ちゃんに会いたくなって……」

 オレンジ色のスカートの太腿のあたりに置いた、しのちゃんの両方の手のひらがかすかに震えている。

「……早くはるかぜ公園行ってもお兄ちゃん来てないかもしれないし……だから……おうちに行ったら、お兄ちゃんいるかなって思って……」

「……」

「ほんとに、ごめんなさ」

 俺はしのちゃんに飛びついて、ぎゅっと抱きしめた。突然の俺の動きにしのちゃんは一瞬身体を硬くしたけれど、しのちゃんを抱きしめる俺の肩に顔を乗せるようにしてその身体をあずけてきた。

「お兄ちゃん……怒ってる、よね」

 つぶやくようにしのちゃんが言う。俺は大きく左右に首を振って、しのちゃんを抱きしめる両腕に力を込めた。しのちゃんの華奢な身体、ノースリーブの肩口から伸びる細い腕の素肌、俺の鼻先をくすぐるしのちゃんの髪の夏の匂い。いつもならそれらに対して働く本能は性欲なのだけど、いまこの瞬間俺の中で稼働しているモジュールはたぶん「父性」とかいうヤツだ。

「怒ってないよしのちゃん……俺の方こそごめんね、しのちゃんの気持ち確かめもしないで、しのちゃんが謝らなきゃいけないような雰囲気作って」

 俺は泣きそうになった。しのちゃんが愛おしくてたまらないという恋愛感情一割父性九割の感情と、とてつもない自己嫌悪とで全身が押しつぶされそうな気分だ。
 どんだけ身勝手だったんだ俺は。警戒心とか偉そうに言ってるくせに、要は自己防衛と嫉妬心だけじゃないか。しのちゃんが急に訪ねてきて焦ったのは、バレちゃまずいとか俺以外のおっさん―小学生から見れば成人男性は基本おっさんだ―に変な目で見られたりしたらヤだなとか、自分本位の感情からじゃねぇか。どうしてしのちゃんが、引っ越してきて半年程度しか経っていない町の中で初めて行く家を探しながらでも俺の部屋に来たかったのか、俺にちょっとでも早く会いたかったのか、その理由についてわずかでも思いを至らせることができないんだ。
 しのちゃんは、基本的には泣かない子だ。母親が家にいる時間が少なかったり小学校でなかなか友だちができなかったりといった寂しさをぽつぽつと話すときも緑黄色社会でダンスして転んだときも泣いたりはしなかった。しのちゃんが俺に涙を見せたのは、はるかぜ公園で俺がしのちゃんに告ったあのときだけだ。
 今だってしのちゃんは身体を小さく震わせてはいるけれど、泣いたりはしていない。ごめんなさい、と、さっき言いかけたときも涙ぐんだりはしていなかった。だが、俺はどうだ。情けなさと申し訳なさで涙が溢れ出しそうだ。このあいだしのちゃんが俺に「お守り」をくれたとき、しのちゃんを路地で抱きしめながら、この光景を誰に見られたって構いやしないと思った俺はどこへ行った。なんで26歳にもなる俺が、8歳のしのちゃんよりも思考や行動がガキっぽいんだ、どうしようもねぇ。
 こぼれそうな涙を必死でこらえ、しのちゃんからそっと身体を離す。

「本当にごめん。しのちゃんは悪くないんだよ」

 きゅっ、と唇を結んだしのちゃんの顔を覗き込むようにして俺は言った。しのちゃんの顔の汗はいつの間にか完全に引いている。

「……お兄ちゃんに怒られたらどうしよう、って思ってた」

「怒らないよ……そりゃ、知らない道を歩いてきたのは危ないって思ったけど、まぁ、そんなに遠くないし、しのちゃんがちゃんとここに来れたから、よかった」

 しのちゃんの頬が少しだけほころんだように見える。

「それに、俺も、しのちゃんと早く会いたかったから、へへ」

 いささかわざとらしい口調と笑顔になった。

「ほんと?ほんとに怒ってない?」

「うん。しのちゃん、俺んちにようこそ」

 くしゃっ、と笑ったしのちゃんがベッドから立ち上がり、片膝をついて座っていた俺にしがみついてくる。この姿勢で座った俺の頭と立っているしのちゃんの頭はちょうど同じくらいの高さになる。しのちゃんは、さっき俺が衝動的にしのちゃんを抱きしめたときのように、俺の肩に顔を乗せ、細い腕で俺の身体を抱きしめた。

「しのちゃん……」

 俺ももう一度、しのちゃんの日焼けした華奢な身体を強く抱きしめた。片手だけででも抱き上げられるんじゃないかと感じる、しのちゃんの8歳のか細い身体。俺の腕に伝わるしのちゃんの肩甲骨の感触。ぎゅっと抱きしめられることによって俺の胸に押し付けられている、柔らかさをまだほとんど感じられないしのちゃんの胸。
 さっきまで悔悟の念に攻められていた気持ちが徐々に楽になっていく。しのちゃんを悲しませたかもしれない俺がしのちゃんによって癒やされていくのも勝手な話だ。俺もいい加減、自分の未熟さや身勝手さとちゃんと向き合わなきゃいけないな。
 ふっ、と、しのちゃんが顔を俺の肩から離した。抱きしめていた腕をほどいた俺の顔を、手のひらの大きさくらいの距離からしのちゃんが見つめる。しのちゃんの肌の匂いが漂ってくるほどの近さにあるしのちゃんの顔。しのちゃんの肌理の模様や、鼻の下にうっすらと生えた産毛がくっきり見える距離。
 そのしのちゃんの顔の、瞳と唇がきゅっと閉じられ、やや尖り目の顎がちょっと上がり、その姿勢のまましのちゃんが身体を硬くする。


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