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夜宴
【SM 官能小説】

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夜宴-3

どこまでお話したかしら。そうそう。わたくしが夜宴の女になった記憶を思い出すとき、もしかしたらあの男ってわたくしが初めて感じた男かしらなんて考えてしまいますのよ。顔はわからないけど。ええ、男の顔をはっきり思い出せませんの。でも、わたくしの中でとても強く感じられる男。身体のどんな部分も動作も隙がなく自信に充ちて、滲み出すような色気があり、優雅な仕草はとても魅力的でいつのまにか惹きつけられる男ですわ。
わたくしは、結婚する以前の遠い昔からその男に恋をしていたような気がいたしますし、彼もきっとわたくしに恋をしていたと思うの。もしもわたくしが夫と結婚しなければ彼はわたくしといっしょになったはずだわ。ええ、わたくしは彼の体の感触や気配を思い出すと、年甲斐もなく、ついつい自分の中心に触れてしまうこともありますわ。お笑にならないでくださいね。こんな老いた女でもそんな悩ましい自分の体を感じたいと思うことがございますのよ。渇ききったものが自然と濡れてくる懐かしい感覚は錯覚かもしれないけど。ううん、違うのよ。わたくしは甘くときめくような雫(しずく)で、ほんとうにあそこを湿らせていたのでございますわ。指でかさかさとした陰毛を掻き分けて指を割れ目に含ませると堅く閉ざされたものを感じるのですが、恥じ入るような枯渇を癒す痛みがとても懐かしい心地よさをわたくしに甦らせるのでございます。そんな怪訝な顔をなさらないで欲しいわ。ええ、濡れますのよ、こんな歳になっても。蜜に潤された肉の合わせ目に指を触れると、肉襞の奥にわたくしの肉体のすべてが溶かし込まれていくような感覚なのでございます。

先生に知っていただきたいのですが、わたくしは毎夜、寝る前に自分の裸体を大きな壁の鏡に映すことを日課にしております。ええ、どれだけ年齢を重ねてもとてもきれいな体だと思っておりますわ。それを確かめるために鏡に裸を映しますのよ。それで鏡に映った自分の姿を見ながらあそこに指を添わせることもございます。もちろんあの男を思い出しながら。でも、ときどき鏡の中に映し出された自分の姿が、わたくしではないときがあるのでございます。どういうことかっていうと、自分の裸体を映していると思って鏡をよく見たら、いつのまにかあの女が鏡に映っているのです。とても驚きましたわ。それもあまりに老い過ぎた醜いあの女の姿だったのです。色褪せた和紙のようにしなびた皺(しわ)が顔いっぱいに拡がり、垂れ下がって萎(しぼ)みかけた乳房や弛んだ下腹はとても醜く、まるで骸骨がかさかさとした黄土色の皮に包まれ、その醜い皮膚に茶褐色の汚いしみがあちこちに点在しているような裸なの。あそこの陰毛は、色素がなく、削げたように疎らに逆立ち、爛(ただ)れて、ゆるんだ肉の溝がいやらしくのぞいていましたわ。何て言ったらいいのか、乾いた風が舞う砂の上に捨てられた花芯が水分を失ったように萎(しなび)れて、肉の花弁の輪郭が卑猥にゆがんだ陰部みたい。ええ、その鏡の中の女がわたくしだったら恥ずかしくて絶望するくらいだったわ。鏡の中の女のあそこの肉芯は吐き気がするくらい醜いのに、しわ枯れた顔だけは気ぐらいが高く、その瞳は男に飢えたいやらしさを滲み出していたわ。そうなの。それがあの女のほんとうの姿なのよ。わたくしの中にじっと潜み、わたくしを羨んで、ただ老いていくだけの憐れなあの女のゆくすえの姿だわ。
わたくしから男を奪おうとする憎々しい鏡の中のあの女は、醜い幼虫が脱皮するように鏡から抜け出し、まるで透明人間のようにわたくし自身と重なり、すっと煙のようにわたくしの中に潜んでしまうの。そのときのわたくしは金縛りにあったように身動きができず、からだの中からあの女が嘲笑う声だけが聞こえてきますわ。わたくしの肉体を蝕み、花芯を掻き毟り、わたくしが惨めな老いた女だと囁き、わたくしを苛めようとするの。きっとあの女のわたくしに対する嫉妬なのよ。なぜって、わたくしがあの男によって夜宴に捧げられた女だからだわ。


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