ご主人様は中学生。-3
―…
「…あ。ちょっとこの家、カレールーないじゃんかぁ!!」
野菜を煮込んで、最後の仕上げって時に大事な物がない事に気付いてしまった。
台所を隅々まで探しても…ない!!
「もう!!カレールーって常備品じゃないの!?」
ぶつぶつ言いながら、時間を確認する。
「…うん、まだ時間あるな。」
なるべく鷹也が帰って来た時に家にいてあげたいからね。暗い家に入るって、凄く寂しい事だし。
「よし、行ってくるか。」
火消して、財布を持って、エプロン外して…よし。
「いってきま-す。」
誰もいないお家だけど、やっぱりもう口癖だな。
「二段熟カレーはぁ〜二段ルー!!コクと香りぃの二段ルー〜♪」
自転車に乗ってると歌いたくなるのはあたしだけじゃないはず。ちなみに今日はカレールーの歌にしてみました。
「あ--!!坊ちゃん!!」
前方に坊ちゃん発見。思わず大声で呼んだら、すごい形相で睨んでる。やばい、坊ちゃんマズかったみたい。
「た〜か〜や〜く--ん!!」
怖いから言い直してみた。
「学校帰り?」
キッとブレーキをかけて、鷹也の前に止まる。
「…それ以外に何に見えんだよ。」
「うん、まぁそうだね。」
機嫌が悪いのはあたしのせい?ううん、きっと普段からこうだよね。うん、絶対そうだ。
「つか何してんだよ。」
「え…と、カレールーがないから買いに行こうと思って。」
「ふ-ん。」
「あ、一緒に行く?」
「は?」
「ほら、乗って乗って!!」
「おい、ちょっッ」
ビックリしすぎて抵抗することも忘れてる鷹也の腕を引く。
「ちゃんと掴まっててね!!」
「…。」
「早く乗れ。」
「命令かよ…」
何だかんだ言って、鷹也は後ろに乗ってくれた。
「…落ちますよ?ちゃんと腕回して下さ-い」
手を離して乗れるほど、お前は器用なのか?
「う…」
躊躇いがちに回された腕をべしッと叩いて、「出発」っと言った。
「わッ!!かなり揺れんじゃんか!!」
出発した途端、腰に回された腕に力が入る。
「だから掴まれって言ってるでしょ?」
とか言いつつも、最近お腹の肉が気になるからあんまり掴まってほしくない。
「…女って柔らけぇ…」
「え-?な-に-?」
耳は前の音を聞くためについてるんだから、後ろに乗ってる奴の声なんて聞こえるはずがない。
「な-に-さぁ-?!」
鷹也に聞こえやすいように声出したら、
「うるせぇよ。」
って耳元で言われた。ドスきいてる声だった。耳元で言われるなら甘い言葉がいい。