覚醒、欲しがる未亡人 本間佳織C-1
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痴漢の手によって佳織が腟内で絶頂に達した直後、佳織が立っている側のドアが開き、痴漢の体から無理やり逃れて、一目散に走った。
佳織の最寄り駅から急行に乗って、まだひとつめの停車駅だった。
だが、佳織の会社の最寄りまで耐えることはもう無理だった。
走りながら衣服の乱れを直し、急いで改札を出た。
このまま出社するのは無理だろうと、タクシーに乗って佳織は家に帰った。
タクシーの中では吐き気が止まらず、家に着いた途端、胃の中のものをトイレで吐き出す。
悲しくて、悔しくてたまらなかった。
シャワーを浴びて、男に触られた服をゴミ袋に入れた。
夫のために買いーー、そしてもしかしたら、隼人に誘ってもらえるかもと淡い期待を抱いて身につけた下着も、だ。
何も考えたくないとベッドに閉じこもって眠っていると、インターフォンが鳴る。
誰だろうとモニターを見ると、そこには武島隼人の姿があった。
オートロックを解除し、しばらくすると、ドアに備えられたインターフォンが鳴る。
時刻は十五時頃だった。
佳織はしばらくベッドの中にいたらしい。
Tシャツにレギンス姿の佳織は、髪を手で何とか撫で付けて、ドアを開ける。
「どうしたの…?」
「俺、今日午後休取ってたんですよ。運転免許の住所変更とか役所で手続きとかしたくって…。本間さん体調悪いって言うから、あらかた終わらせて、飲み物渡そうと思って来てみたんですけど…迷惑でしたか」
「ううん、そんなことない。ありがとう、嬉しい。むしろこんな顔して出てごめん。お茶くらい飲んでいく?風邪じゃないからうつらないし」
「あ…。体調大丈夫ですか」
「うん、寝てたらだいぶ」
佳織は隼人を家に入れて、リビングのソファーへと座らせる。
「冷たいお茶がいいかな」
佳織は冷蔵庫からお茶を取り出して、二つのグラスへ注いで隼人の隣へ座る。
「頂きます。寝てるところ起こしちゃいましたか。すみません……」
「寝てたけど、起きれてよかった。ずっと寝ちゃうところだった。電車乗ってたんだけど…具合悪くなって、途中下車してタクシーで帰ったの。帰ってきたら吐いちゃって」
「え……マジですか」
「すっぴんでごめん。元々おばさんだけど、さらにおばさんでしょ」
佳織は苦笑いするしかなかった。
性にオープンになった途端にこれだ、と。
今まで、ほとんど夫としか経験がなかったにもかかわらず、自分より若い男たちにずるい態度を取ってしまったことが災いしたのだと、思うしかなかった。
自戒の気持ちを抱く佳織の髪に、隼人はそっと指を通した。