覚醒、欲しがる未亡人 本間佳織C-2
「ーーちょっと、さすがに顔くらい洗ってくる。お茶、飲んでて」
佳織は立ち上がって洗面所へと向かった。
洗面所の鏡の前に立ち、泣いて腫れた顔を洗い、吐いてしまって違和感のある口の中もマウスウオッシュでゆすぐ。
鏡を見て、そこに立つのは疲れきった五十の女なのだと認識せざるを得ない。
会社の人と関係を持たないと言い切った隼人と理央や、痴漢だって、ある程度年齢のいった女なら抵抗しないと思ったのではないか、佳織はそう思った。
リビングへ戻り、佳織は隼人の横へ再び座った。
仕事のあと家に戻ったのか、Yシャツでなく、白のTシャツに、ジーンズ姿の彼の体を指先でなぞる。
「したくて…来たの?」
いつもクールな隼人の顔が、その言葉によって歪む。
「なんで……心配だから、ですよ。いや、それは訂正します。少し、下心はありました。すみません」
「おばさんに声掛けとけば、ヤらせてくれるし、恥ずかしくて言えないだろうってそんな感じだったのかな?会社の人に手、出さないんでしょ」
「ーー本間さん、そんな言い方…。いえ、そう思われることをしたんですよね。
実際、藤沢出張の時、本間さんを部屋に呼ぼうって理央と二人で計画しました。夫を亡くした女性だから、寂しいだろうって。俺らが迫っても断らないだろうって、思いました。本当に謝ります」
その言葉に、佳織は隼人のシャツをくっと指先で掴む。
「会社の人に誘われてもしないのは、確かに面倒くさいからです。だけど面倒くさくなるリスクがあっても、本間さんとはしたかったんですよ、俺も、理央も」
「本当…?あたしのこと、そういう風に思ってたの…?」
「本当です、だから…歓迎会だって言ってくれたのに、息子さんだっていたのにあんな……」
隼人の顔が見る見るうちに真っ赤になっていく。
隼人は自分の右側に座る香織の腰を抱き留めた。
「あのあと……何回…オナニーしたと思ってるんですか…。あんな直接…本間さんのナカ感じて、やばかった……」
佳織の耳元に隼人の荒い息が吹きかかる。
「仕事中だって…隣の席だから、やばくって…。今日もこうやって部屋の中、入れるなんてずるいです。
本当に心配して来たのに、期待させないでくださいよ。理央は俺には言わないけど、多分マジで本間さんのこと好きになっちゃったから…悪いとは思ってるんですけど……」
佳織は顔を真っ赤にさせる隼人を愛おしく思い、抱き寄せてキスをした。
ちゅっ…とついばむようなキスをその唇に何度も落とす。
「今日ね……何で途中下車したか、教えてあげる」