「向こう側」第二話-1
そこでスグルが見たのはマンホールの下にいるとは思えないほど大きな一軒家があった。
「うぃ〜っす!ただいま戻りましたよ〜っと」
バッジは扉をあけて中に入っていく。
スグルも後に続く。
「あっ!バッジさん。お帰りなさい!あれ?誰っすかその子?新入り?」
スグルとさほど年は離れていなさそうな元気のある少年が出迎えてきた。
「いや別に新入りってわけじゃないんだけどなぁ…そういやみんなは?」
いきなりの質問に答えをはぐらかしたバッジは話題を変えた。
確かにこんな広いエントランスに男三人だけだとやけに寂しい感じがする。
「みんな奥の部屋に集まってますよ。なんだかバッジさんの反省会をするだとか…何かやらかしたんですか?僕もみんなのとこへ行くんでバッジさんも早く来てくださいよ」
そう言うと少年は重そうな荷物をガチャガチャと音を立てながら走り去っていった。
「ま…まじで反省会すんのかよ…だりぃなぁ。お前も来いよ。こんな誰もいないところで一人でいるのはいやだろ?」
スグルの返事も聞かずにバッジは奥の部屋へと足を運び始めた。
スグルはバッジが自分に責任を擦り付けるつもりだと思ったが仕方なく奥の部屋へと向かった。
部屋の中にはいかにも強そうな大男と銃の手入れをしている金髪のロングへアーの女性、それにお偉いさんのオーラが漂っている老人そしてさっき会った少年がいた。
「どうもみなさん待たせちゃったみたいだね〜あれっあと2人ほどいねーみてーだけど」
「シュバインさんはまだ帰ってきてない。マリーは食事の準備中だ。おいバッジ、なんなんだ?お前の後ろにいるそのガキは?」
声と喋り方からしてこの大男がさっきバッジと電話で話していたアーリアムらしいとスグルは悟った。
「ああそうそう、このボウズがあの建物にいたからおれがターゲットと間違っちゃったんだよ。どうやら家出してきたらしい。そういや名前をまだ聞いてなかったな。なんて名前だ?」
スグルこんな見ず知らずの人達の前で自分の名前を言うのは口から心臓がでる思いがした。
「ス…スグル…です…あと家出じゃないんです…けど…」
スグルに似合わないボソボソとした自己紹介になってしまった。
「へ〜お前スグルっていうのか。というかお前まだ『下の世界』から来たって言うつもりなのか?」
そのバッジの言葉を聞いて部屋にすこしの沈黙がながれ、アーリアムが笑い始めた。
「『下の世界』からやって来ただと!?がっはっは!!それが本当ならバッジ、凄まじい手柄じゃないか!?まぁ嘘に決まってるけどな。そんな理由で責任を逃れようたってそうはいかな…」
「ちょっといいかね?アーリアム君」
アーリアムがバッジを嘲り笑っている最中にスグルから見て一番奥に座っている老人が口を開いて話に割り込んできた。