「向こう側」第二話-5
「ほう、もうわしの番か。わしはヴェラマージという名前じゃ。わしがどういう人物かは後々わかるじゃろうからここで紹介することは特にないのぉ」
そういうとヴェラマージはにっこりと微笑んだ。
ヴェラマージの次はさきほど部屋の中で銃の手入れをしていた女性の番だ。スグルははじめ見た時からこの女性が気になっていた。魅力的だからだ。きれいな長い金髪にモデルのようなスタイルに外国人女優のようなきれいな顔立ち。今はジーンズにTシャツという服装だが、女性らしい服装をしたらもっと綺麗なんだろうなとスグルは思った。
しかしその女性は帽子を目深にかぶったまましゃべる素振りを見せなかった。
「おい!何か言えよ」
バッジが促す。
「あたしガキは嫌いなんだよね」
その言葉を聞いてスグルはなぜだかものすごく落ち込んだ。その様子を見てウィルが小声で話しかけてきた。
「僕に対してもあんな感じだから気にしないほうがいいよ。笑ったとことか見たことないもん」
「いいからせめて名前ぐらい言えよな」
女性はバッジにそう言われるとやれやれと肩をすくめた。
「ミスズ、あんま気安く近づかないでよ。体に穴が開きたくなかったらね」
(こ……怖えぇぇよぉ!綺麗な花にはトゲがあるって言うけどこんな鋭くとがったトゲがあるなんて聞いたことねぇよ!)
とスグルは心の中で思った。
「次は俺か、俺の名前はアーリアムだ。ミスズはこういう奴なんだ、気を悪くしないでくれ。さっきは悪かったな君を『下の世界』の者だと信じなくて」
「いやいやそんな気にしてないんで大丈夫ですよ。こちらこそよろしくアーリアムさん」
アーリアムは体は大柄だが、礼儀正しい印象を受けた。
「ところでバッジへの不平不満があったらいつでも相談しに来てくれ。あいつは適当な奴だからな」
「聞こえてるぞコノヤロー、おまえみたいなバカ生真面目な奴よりましだと思うんだけどな〜」
なんだかんだいってこの二人はけっこう仲が良いんだなとスグルは思った。
アーリアムはバッジの方をかるく睨みながら席につく、最後はウィルの番だ。
「僕はウィルっていうんだ。よろしくねスグル。スグルって年いくつなの?」
「16だけど」
「じゃあ僕と同じぐらいだね。ここじゃ同い年の友達とかできないからつまんなかったんだよ。仲良くしようね」
スグルはウィルと握手を交わした。
そしてひとつの疑問が生じた。
(一体この人達って何のつながりがあるんだろ?)
この部屋にいるのは若者と家政婦と老人と怖い女性と大男と好青年だが、スグルはこの人達から共通点を見出すことはできなかった。それにバッジはここのことをアジトと呼んでいた。スグルはアジトという言葉から良いイメージはわかなかった。