『その後のとある普通の恋人達』-1
夕暮れ時の薄暗い淳史の部屋には、甘い時間が流れている。
ソファーに仰向けに横たわる淳史の上に明香は跨がり、淳史は下から明香を突き上げた。
明香は自分の腰を淳史の動きに合わせて上下させる。
「ハァッ…あッ…ンンッアぁンッ…」
クルンと柔らかくカールした明香の髪がふわふわと二人の動きに合わせて揺れる。
明香は淳史の皮膚の温かさを全身で感じたい…と、下にいる淳史に覆いかぶさる様にしてキュッと抱き付いた。
「あっく…キス…」
トローンとした眼差しで、明香は物欲しげに淳史の胸の上にピタリとくっ付きながら淳史に言う。
淳史は困ったように眉尻を下げ、思う。
やれやれ…こっちは久々のセックスで、挿入して少し動いただけでも明香の締め付けに拘束されてツライっていうのに…。
「ったく…明香は…」
口からはそう言いながらも、
チュッ…ちゅ…チュッ
触れば面白いように形を変える明香の胸の弾力を、手の平いっぱいで味わいながら、軽いキスを数度交わす。
ちゅ…チュ…ちゅっ…
首を左右に動かしながら唇の柔らかさを堪能しあう。
チュゥゥゥ…
チュパッと音をさせながら唇を離し、
「はい。ラッキーセブン☆」
と、キスを7回。
淳史と明香の決まりごとのひとつで、キスはいつも1セット7回。
一緒に眠って朝を迎えた時にするにも、バイバイする時も、キスは1セット7回。
もう我慢の限界だと、意を決して、淳史が下から明香をズンズンと強く突き上げる。
「ィやぁっ…アァんッアァ…ンッ!ハァッアァ…!!ハァッ…」
明香の愛液が二人の結合部を濡らし、時折薄暗い部屋にキラリと小さく光りを宿す。
ヌチュ…ヌチュ…ニチャ…ニチャッ
明香は背中を反り、ぷるんぷるんと乳房を揺らしながら、乳首をツンと上に向け、一糸纏わぬ肢体をしなやかに乱れさせる。
規則的に突き上げられ、明香の内部はますます圧迫し、締め付ける力を強める。
ガバッ!と突然淳史が上半身を起こし、明香を抱きしめた。
「アぁッ…ハアッ…あっく…?ハァ…」
「明香、もう…ヤバいって。出ちゃうよ。俺…。」
明香は淳史の背中に手をまわし、繋がったままキュゥゥッと抱き締めかえす。
しばらく無言で淳史の肩にあごを乗せて目を閉じていた明香は、ふとカリカリと淳史の肩に噛りつく。
「また、やってる…」
と、淳史は黙ってそのままの体勢で明香の動きを注視する。
目をこらすと、薄暗闇の部屋に浮かび上がる淳史の白い肌には、今付いたばかりのキスマークの痕が淡く見える。
普通、キスマークは激しく求め合った恋人達の愛の証であったり、パートナーの浮気防止の為であったりするものらしいのだが、明香の場合は違っていた。
例えば自然界で、コケむした岩の一部分に上から水がポタポタと流れ落ちていて、永年そうやって水がずっと同じ場所に落ち続けると、その部分がへこんで岩にさえ穴があいたりすることがある。
明香はこうして淳史のまったく同じ部分に永年噛りついていけば、いつしか自然的な穴があき、また今とは違った形で一つになれる筈だと信じていた。