D作戦-1
クラブで待つこと1時間。クラブママが社長は来れなくなったと伝える。
「兄貴もひどいな。誘っておいてドタキャンかよ。昔からそうなんだ。」
仕方なく二人で飲み始める。銀座ホステスの上手な誘導によって涼子の酒量も増えていく。
店をたった時には健司の足はふらついていた。見送りに出たホステスにキスしようとさえしている。
完全に酔っている。帰りのタクシーでは乗ってすぐ寝てしまう。
「専務起きて下さい。もうすぐ自宅マンションに着きますよ。」
「うっ。ちょっとここで停めてくれ。気分が悪くなった。」
降りて隣のマンションの前に崩れ落ちる。
タクシーから降りた涼子が介抱するがすぐに寝てしまう。
仕方なく肩を貸し専務のマンション前まで送り届ける。
知らず知らずの間に専務に肩を貸す事に抵抗がなくなるほど洗脳されていたのだ。
タクシーに乗って振り返るとマンション入り口の階段で寝てしまっている。
仕方なくタクシー料金を払い、専務の介抱に向かう。
ふたたび肩を貸し抱き合うようにして部屋に入った瞬間、健司は豹変する。
酔っていなかったのだ。部屋にロックをした後涼子を抱きしめ唇を貪る。
状況は違うが朝の挨拶と同じ行為に思ったより抵抗は少なかった。
ぴっちりミニタイトのファスナーを下げ腰のフックを外される。
健司は大沼老人の接待の様子からここまでは簡単に進むと見こしていた。
本気で抵抗したのはスーツを脱がされスリップ姿になった時だった。
遅すぎる。本気の抵抗は部屋の中に入った瞬間から行うべきだった。
と言うより以前の涼子なら酔った男を部屋の前に置き去りにして帰っただろう。
銀座のホステスによって専務に薄い水割りを涼子には濃い水割りを飲まされていたのだ。
現実とは逆で酔っていたのは涼子の方で健司は酔った振りをしていたにすぎない。
肩を貸した時も男の体重は感じなかったのに不審は抱かなかった。酔いのせいだ。
男は女の肩を抱いてもつれ合いながら歩いていただけだったのだ。