出逢い・こいびと-3
「うん、あのね……俺の好きな人は……しのちゃん」
あえて溜めるように、照れている体で−いや、実際告っているので照れていることは事実なのだけど−そう言うと、しのちゃんはすっと息を吸った。
「うそ……」
身体を起こし、右の手のひらで口元を押さえる。その目に、じわっと涙が浮かぶのが見える。やば、引いたか。気持ち悪かったかな。
「……ほんと?」
ちょっぴり鼻声でしのちゃんが言う。
「ほんとだよ、しのちゃんが大好きだ」
「うぅ……うれしい。だって、あたしもお兄ちゃんのこと、大好きだもん……」
口元の手のひらを握って涙を拭ったしのちゃんは、すん、と鼻をすすってそう言い、いへへ、と健気に笑顔を見せた。俺がしのちゃんの肩をそっと抱くと、しのちゃんは俺の胸に頭をもたれさせてきた。
「へへー、なんか、あたしとお兄ちゃん、こいびとみたい」
「んー、恋人、でいいと思うよ」
「あたしと、お兄ちゃんは、こいびとー。やったぁ、あたし、こいびとできるの初めて」
公園の中には誰もいない。傍から見ても聞いてもヤバいこの状況は他人にはとても見せられない。
夜の仕事をしているっぽいシングルマザーの母親、まだ友達ができていない引越し先の学校。ほぼひとりで過ごす生活がよっぽど寂しかったのだろう、だから俺のような見知らぬ大人になつき、やさしく接してくれる―下心込みだけれど―俺に情が移るのもある意味当然かも知れない。それに小学2年生くらいなら、血の繋がらない異性とちょっと仲良くなるだけで疑似恋愛的な感情が湧いてくることはあったりする、んじゃないか多分。しのちゃんが「こいびと」と言ったからってその程度の意味だろうから、真に受けちゃいけない。素人童貞でペドフィリアの俺だってそのくらいはわかっている。
だから、この瞬間までは最低限の理性はあった。しのちゃんがこう言うまでは。
「ねー、お兄ちゃんはあたしのこいびとで、あたしのこと好きなんでしょー」
「うん、大好きだよ」
「じゃ、じゃあ、お兄ちゃんあたしにおちんちん見せてもいいの?」
「……あ」
そうきちゃったか、まずいな、いや、これ期待どおりの流れじゃないのか俺。
「……そ、そういうことに……なるね」
「わーい、見せて」
しのちゃんの口から爆弾級の一言が飛び出した。
しのちゃんが性的な興味で言っているのか、それとも単に自分には付いていないモノへの好奇心で言っているのかはまだわからないけど、この際俺にとってはどっちでも同じことだ。
「ん……おちんちんはね、外では出さないんだ。好きな人にしか見せない大事なものだからね……あそこ行こう」
俺は、公園の左奥、車が一台も停まっていない駐車場の手前にある丸い屋根が乗った建物を指差した。ドアが3つ並んでいて、そのいちばん右は多目的トイレだ。
「うん!へへへ、お兄ちゃんのおちんちんだー」
しのちゃん、いくら園内はほぼ無人とはいっても、もう少し小さな声でお願い。