出逢い・こいびと-2
こうして、俺がシフト休みの放課後はしのちゃんとふたりで公園で過ごす生活が始まった。
白状するとしのちゃんに声をかけたのは、純粋な親切心やら子供を見守る立派なオトナとしてとやらではない。だが、後にああいう展開になるまでは、しのちゃんを性的にどうこうしようという気持ちは特になかった。しのちゃんの性格からたぶん、放課後母親のいない自宅にあがることもできたかもしれないけど、なかなかにリスクが大きそうだったし、だいぶ仲良くなってからもしのちゃんの身体に触ったりは−手をつないだり頭をなでたりはしたけれど−ほとんどしてこなかった。
ただまあ正直、公園でダンスしたり歌ったりしているしのちゃんをスマホで撮った動画や、かわいいポーズをさせて撮影した静止画を見ながらオナったりは何度もした。8歳の女の子、それも自分になついている、三日月型の二重まぶたの美少女の生身の身体は、重度のペドフィリアの俺にはたまらないものがあった。まだ女の子らしいラクトン臭がほとんどない体臭や、俺のすぐとなりで話したり歌ったりするときにすきっ歯の口から漂う幼女の息臭を思い出して、液晶画面の中でおっきく口を開けて歌うしのちゃんを見ながら射精していた。
そのあたりで自重していた俺の自制心が大きく揺らいだのは、公園で過ごすようになってから二ヶ月くらいが経ったある木曜日だった。
ベンチに座っている俺の前でヨルシカの「ただ君に晴れ」を歌い終わったしのちゃんは、ベンチに戻って俺のとなりにちょこんと腰掛けると、俺の顔を見上げて言った。
「ねぇ、おちんちんって、女の人に見せたりするの?」
「……え?」
俺は、しのちゃんの口から出てきた唐突な単語にどぎまぎして固まった。
「の?」の口の形のままで俺の答えを待っていたしのちゃんは、固まった俺が言葉を紡げないでいると、ちょっと息を吸って続けた。
「あのね、今朝ママが、電話で話してたの。なんか、ゆうべお客さんがママにおちんちん見せてきたって。ママ、なんかやーね、って言ってたけど笑ってた。あたしもう学校いかなきゃいけなかったから、ずっとは聞いてなかったけど」
しのちゃんの母親の職場は、急行で二駅先の繁華街にある飲食店だ。しのちゃんいわく「りお」なんとかという店らしく、ネットで調べてみるとなかなかにきわどそうな店がヒットした。電話の相手はたぶん店の同僚かなんかだろう。
「ね、お兄ちゃんは、おちんちん女の人に見せるの?」
膝までのスカートから伸びる細い脚のかかとでトントンと砂利の地面を蹴りながら、しのちゃんが突っ込んだことを聞いてきた。
「あ……うん、まぁ、普通は見せないけど……」
まともな答えをどうにかひねり出したが、ふっと邪心が芽生えた。これは、エロトークに進展できんじゃないか。俺にとってしのちゃんは8歳の年端もいかないこどもではなく、かわいい「女の子」だからな、女の子なら、ちょっと親密になったらエロトークくらいたまには出るだろう。
「もしも、相手が好きな女の人だったりしたら、見せることがあるかも」
「えー、うそー」
しのちゃんは今度は「お」の口の形のまま、ちょっと固まった。
「じゃあじゃあ、お兄ちゃんは好きな人いるの?」
そっちかい、見せる見せないじゃなくて。まぁ小2の女の子ならふつうはそうだよな。しのちゃんにとって「おちんちん」に、まだ大人の意味はないしな。食いつくなら「好き」のほうだろうな。
「うーん、いる……のかなぁ。どうだろう」
そう言いながら、一瞬で頭の中を整理した。
前提として、俺はしのちゃんのことが女の子として好きだ。かわいいし、もししのちゃんが成人ならとっくに口説いている。ただ一般社会では8歳の女の子と付き合う二十代の男は(まず)いないし、ペドやロリに対する世間の風当たりは冷たい。だから現時点では、しのちゃんに対しては陰キャの片思い以上のことはできない。一方で、「男は、好きな人にはおちんちんを見せることがある」という事実と「俺はしのちゃんのことが好き」という事実をいっぺんにぶつけたら、8歳のしのちゃんはどういう反応を示すか。
「わ、いるんだー、だれだれ?どんなひとー?」
テンションの上がったしのちゃんが前のめりになっている。身体をぐいっ、とこちらににじり寄せ、俺の太腿に手を乗せんばかりにして見上げてくる。ピンク色のドルマンスリーブTシャツの、少しゆるくなった襟首からしのちゃんの胸板とまだぺったんこのちっちゃな乳首が覗き見えたとき、俺の邪心が強固になった。