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『夕子〜島の祭りの夜に啼き濡れて…〜』
【その他 官能小説】

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『夕子〜島の祭りの夜に啼き濡れて…〜』-3

たくさんの笑顔が二人を見つめてくれた。変わらぬ風景が二人を迎えてくれた。その中心に居る、二人。睦美は朝一のキスを拒む気に、もう、なれなかった…。柔らかく舌を絡め、唾液を飲む。倒れ込む。二人。そっと。決めた二人に、一握りの理性が、戻る。
「恥ずかしいから…」
「分かってる…」
 朝一の愛撫に荒々しさが消え、息を潜めるような気遣いが感じられるようになる。音を立てず、動きを征しながら、それでも睦美の弱い箇所を責めてくる。
「あぁぁ…ん」
 堪えきれず溢れた喘ぎを、慌てて噛み殺す。愛しさをもって、優しさを掲げて、睦美の体を欲する朝一の愛撫に、透明な涙が静かな夜を濡らしてゆく。虫の声。浜の波。抜ける風。二人は互いの息をかばいながら、求め合う…。

 入って、くる。息を飲み込む。入って、くる。息を吐き出す。一つに繋がった体が、夜の海の様に、静かに揺れ始める。今までにない、柔らかい突き上げに、睦美の神経が撫でられてゆく。奥歯を噛み、唇を結んで、喉を突く喘ぎを封じ込める。濡れた肉襞に包まれて、早まりそうな腰の動きを、朝一は必死の我慢する。木造。旧家。些細な動きすら、この家中に響き渡りそうで、木の軋む音が常に耳に刺さる。震え絞るような朝一の呻きが、睦美の耳たぶを濡らす。奥歯の隙間から、細切れの喘ぎが漏れる。小さく、小さく、けれども、早く、強く、朝一の動きが…変わる。膣内で聞く朝一の呻き。放出の時。寸前に作られる二人の隙間。飛び散る精液が、睦美の腹部を汚していった…。

 恥ずかしさと気まずさを顔に映して、朝食をとる。気付いてはいないであろう、母のごく当たり前の振舞いに、睦美と朝一だけがドキドキしていた。
「大谷まであたしも行くから、一緒に出ましょう、睦美さん」
 母の言葉に、睦美は今日戻ることを朝一は思い出す。夕子の母親の見舞いであることはすぐに分かった。
「夕ちゃん、大変だな…」
 白飯を頬張りながら朝一は昨夜の夕子の姿を“意識”に追う。夕子に父親は居なかった。母との二人暮し。ずっと。物心、ついた時から…。
「船、遅れるで」
 母の声に、大きく白飯を頬張る。睦美が昨夜より慣れた手付きで片づけを始める。蝉の声が、山間の集落に響き渡り、何処からか大きな雲を呼び込む。真っ青な空が海を包み、気温を上昇させていく。

 桟橋を離れていくフェリーを、朝一は眩しく見送る。頬に残る、睦美の裸の唇の感触。化粧は船の中でするわと、睦美は笑った。母が切符を買いに行ってる僅かの時間に、睦美は2度、朝一の頬に唇を寄せた。
「待ってるね、先に帰って…」
 そう言って朝一の手を柔らかく包んだ。肩口から汗が噴き、シャツに浮いてくる。フェリーが島影に消えるのを見届け、朝一は父親に借りた車へ乗り込む。効きの悪いエアコンが、額に汗を作った。宛てもなく10年ぶりの小谷島を走る。宛もなく…といったところで、島を1周するのに1時間も要さない。
「立派なモノ建てやがって…」
 目に映る真新しい鉄筋の校舎。島の、小学校。狭く感じる校庭。消えかけのトラック。鉄棒がひどく玩具に見える…。


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