新・セクシャルな講義・第7章-3
「では……まずは、こんな話から、
皆さんの中には既にこのお話を知っている方もいると思いますが」
そう言って私は皆を見つめながら次の話を切り出した。
「初めに、少し古い話ですが、作家の有島武郎と人妻との不倫のことです。
彼は当時は独身の売れっ子でした。
相手の彼女は波多野秋子と言い、夫がいる美人の編集者でした。
当時、彼女は出版界では誰からも好かれていました。
しかし、武郎との幾度の密会がばれてしまい、
最後に、二人は武郎の別荘で激しく肉体関係を結びました。
そして、 2人が抱き合って自殺をしたのです。
このように、他人を奪ってまで貫く激しい恋はときには
大いなる代償をうけることがあります」
私が一気に言うと
「あの……有島武郎は、『或る女』や『カインの末裔』を書いた人ですよね」
そう言ったのは、夫人だった。
「はい、そのとおりです。他に不倫の関係の人達といえば、
与謝野晶子が、妻子がありながら奪った与謝野鉄幹との関係でしょう、
後に結婚をしましたが。
つまり不倫とは既婚者、又は婚約者がいながら、
その心と肉体を奪う激しい情愛だと、私は思っています」
そう言って一息つくと夫人が手を挙げた。
「あの失礼ですが、先生は不倫をしたことなんか無いですよね」
その質問に、女子たちは驚いていた。
さらにその女子たちが驚くことがあった。
「ありますよ。まあ、ここでははっきりとは言えませんが」
その時、私は首筋から汗が出ていた。
それに勇気づけられたのか、夫人は言葉を選んでいた。
「あの、これは私ごとで恐縮なのですが、これも不倫かどうか……」
私は、夫人のその言葉が気になっていた。
「学生の皆さん、これから夫人が話す事は絶対に内緒ですからね」
「はーい、もちろん言いません、口にチャックします」
と朱美がいうと、クスクスと言う笑いが起きた。