お江戸のお色気話、その10-2
みんなの周りを見ながら、長老が言った。
「さて、盛り上がったようだな、では与太吉、話してもらおうじゃないか」
「ほいきたさ!」
与太吉がそう言うと一斉にみんなが笑った。
「じゃあ皆さん、前を失礼します」
そう言って、与太吉はご老人の前へやってきた。
「まあ、色々と話はありますが、話が飛ぶかもしれないのでそれを承知でね」
「おいおい、話が飛んじゃうのかよ。まぁいいやっておくれ」
「では、ご隠居、喋る前に一杯その酒を飲ましてくれませんか」
「おお、いいともさ、景気づけにいっぱいやってくれ」
「ごっつあんです」
与太吉は、手に持った杯に、長老から入れてもらった酒を一気に飲んだ。
それを見た男たちは拍手をした。
「おーい、与太吉、色っぽい話を頼むぜ!」
「まかせておきな!」
いよいよ、自分から話すと言い出した与太吉の話が始まった。
「さてと、まずは銭湯の話から始めようかな、ところでみんな、
体を洗うのはどうしてる?」
「この近くには銭湯がないから、みんな釜戸でお湯を沸かして、
それを桶に入れて体を拭いているよ、それがどうしたかね?」
為吉は怪訝な顔をして言った。
「そうだよね、このうらぶれた長屋じゃそれしかないが、
もっと人が多く住んでいる場所じゃあ、銭湯が一杯にあるんだよ」
「しかしねえ、お上から、町民は勝手に家で風呂を炊いてはいけない
というお触れがあるんだよ」
「そうらしい、お武家でも、あまり風呂を持っていないらしいね」
「だから、江戸の城下には銭湯が多いらしい」
「それはあるだろうね、俺はまだ入ったことないが」
「ところが、大きな銭湯では、男も女も一緒に入るんだよ」
「え、えっ? そうかい……」
「俺もそれよく聞いたよ、江戸の街中では大体そうらしい」
それを聞いていた植木屋の妻のやえは
「それは、恥ずかしいよね、男と一緒に入るなんて……」
「どこも、かしこもそうらしい、子供も同じだよ」
「もし、そうなったら、おいらはやえさんの裸を拝みたいな」
「俺も、色っぽいやえさんの白い身体を見てみたいぜ!」
「いやん、スケベね、あんた達……」
「あはは」
「それにさ、夕方になると薄暗くなるだろう、
灯りも無くなってくるし、いまいちだしな」
「たしかに」
「でもさ、男と女が、裸で薄暗い隅っこのあちこちで始めるんだよ」
「何をかな?」
為吉はとぼけて聞いた、想像はしていたが……。
そこで八百屋の女房のたまが、色っぽい声で
「あらん、きまってるでしょ、男の太いあれが女の赤貝のなかに
はいるのよ、女もそれを望んでいるしね」
「へえ、じゃあ、たま姐さんもかい?」
「いやだ、あたしは違うわよん」
と、たまが片目を瞑って言うと、皆は大笑いをした。