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伊藤美弥の悩み 〜受難〜
【学園物 官能小説】

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恋人達の悩み7 〜Summer Vacation〜-8

「君達、三人だけ?」
 ナンパ男Aが、話し出す。
「男いるわよ」
 三人を代表して、瀬里奈が冷淡に答えた。
 美弥も輝里も、ナンパを断れる程に根性が太くないと判断しての事である。
「くぅっ、冷たいねぇっ!こんな美人をほっとくなんてっ!」
 ナンパ男Bが、わざとらしく言った。
「そんな冷たい彼氏はほっといて、俺らと遊ぼうよ!」
 ナンパ男Cが、強引に美弥の腕を掴む。
「きゃっ!?」
 座り込んで抵抗しようとする美弥の腰を、ナンパ男Cは座られないよう無遠慮に掴んだ。
 腰を掴んだのが龍之介の手ではないという時点で、美弥は全身に鳥肌が立つ。
「あんたっ……!」
 あまりにも礼儀から外れた行動に、瀬里奈は苛立った声を上げた。
「はいは〜い。お疲れ様ぁ」
 妙に明るい声が、ナンパ男Cの後方からかけられる。
「着替えてる最中、退屈しないようにお相手してくれてありがとな〜」
 無遠慮なナンパ男Cの手は美弥の腕と腰からもぎ離され、その肩には腕が回った。
「後は僕達が引き受けるから、退散してくれて構わないよ」
 はっきりとトゲを含んだ声に、ナンパ男Cは額へ青筋を浮かべる。
「あ!?」
 ナンパ男Cは眉を逆立てて振り返ったが……険悪に微笑む男三人を目にして、いきなり戦意喪失した。
 ナンパ男達が振り返った時のインパクトに重きを置いて、三人は秋葉が先頭に立っている。
 頭一つ分以上背の高い秋葉から見下ろされているのだから、その威圧感はかなりのものだ。
 その秋葉がナンパ男Cの肩に腕をかけ、筋肉をもりもりさせながらどう見ても友好的とは言えない額に青筋立てた笑顔を浮かべているのだから、さらに箔が付くというものである。
「し……失礼しました」
 ナンパ男達は、口の中で何事かをもごもご呟きながら退散した。
「グッドタイミング」
 瀬里奈は三人へ、親指を立ててみせる。
「いや、遅れて悪かった。大丈夫?」
 龍之介が、美弥に手を差し延べた。
 何故か龍之介だけ、薄手のパーカーを羽織っている。
「ん」
 美弥は頷き、龍之介の手を取った。
「さて、気っ色の悪い体験しちまった事だし、ぶぁ〜っと遊んで気分転換しようか!」
 紘平の言葉に、瀬里奈が頷いた。
「あ、僕は留守番してるよ」
 龍之介はそう言うと美弥の手を離し、陽射しを避けてビーチパラソルの下に避難する。
「留守番は一人で十分だし、遊んどいでよ」
 そう言われた美弥は、首を横に振った。
「龍之介と一緒じゃなきゃ、意味ないよ」
 そして美弥は、龍之介の隣に腰を下ろす。
「んじゃ、ちょっと遊んできたら交代しようか」
 紘平の申し出に、美弥は頷いた。
「じゃ、後でな」
 二人に挨拶した四人は、人込みの中へ紛れていく。
 姿が見えなくなってから、美弥はパーカーに手をかけた。
「この暑いのに、なんでこんなの着てるのよ」
 龍之介は何か言いたそうに美弥を見てから、ふっと視線を逸らす。
「僕、海には浸からないからね」
 いきなりの宣言に、美弥は目をぱちくりさせた。
「なんで?」
「……殺す気?」
 龍之介は、自分の背中に視線を向ける。
「まぁ、手ぇ出しちゃった僕が悪いんだけどさ……」
 何となく、美弥は理解した。
 手を伸ばし、おもむろにパーカーをめくり上げてみる。
 引き締まった広い背中のあちこちに、赤いミミズ腫れのようなものができていた。


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